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フーリエ変換を用いた微分方程式の解法 📂フーリエ解析

フーリエ変換を用いた微分方程式の解法

説明

フーリエ級数フーリエ変換は、熱方程式を解くために出てきた概念である。もちろん、条件を満たしていれば、他の微分方程式を解く時にも使用できる。特にフーリエ級数は、量子物理学で粒子のエネルギーをシュレディンガー方程式を通して計算する時に使用される。多くの物理学科の学生は、それがフーリエ級数だとは知らずに使用しているが、教えてあげると何かは分かる。与えられた微分方程式の条件によって、フーリエ変換とフーリエ級数のどちらを使用すべきかが決まる。問題で与えられた範囲が有限の時はフーリエ級数を、無限の時はフーリエ変換を使用する。

解法

次のような熱方程式が与えられているとしよう。

ut=kuxx(<x<) u_{t}=k u_{xx} (-\infty < x< \infty)

$$ u(x,0)=f(x) ( -\infty < x< \infty)
$$

正の時間ttに対して境界条件はないとする。uuffが急激に減少して、x±x \rightarrow \pm \inftyの時に00に収束すると、つまりL1L^1関数だと仮定しよう。すると、フーリエ変換が存在する。xxに対するフーリエ変換を与えられた微分方程式に適用すると

F[ut](ξ, t)=kF[uxx](ξ, t) \mathcal{F} [u_{t}] (\xi,\ t) = k \mathcal{F}[u_{xx}] (\xi,\ t)

フーリエ変換の性質[f]^=iξf^\hat{[f^{\prime}]}=i\xi \hat{f}を右辺に適用すると

F[ut](ξ, t)=kξ2u^(ξ, t) \mathcal{F} [u_{t}] (\xi,\ t) = -k\xi^{2} \hat{u}(\xi,\ t)

この時、左辺を展開して書くとuteiξxdx\int u_{t}e^{-i\xi x}dxで、条件が良いために積分と微分の順序を変えられると仮定しよう。通常の場合は、自由に微分と積分の順序を変えることはできないが、このタイプの問題を解く時にはほとんど常に成り立つので、あまり心配しなくても大丈夫だ。すると、uuの微分のフーリエ変換がuuのフーリエ変換の微分と同じになる。従って、与えられた微分方程式は下記のような簡単な常微分方程式になる。

u^t(ξ, t)=kξ2u^(ξ, t) \dfrac{\partial \hat{u}}{\partial t}(\xi,\ t) = -k\xi^{2} \hat{u}(\xi,\ t)

固定されたξ\xiに対して上記の微分方程式を解くと

u^(ξ, t)=f^(ξ)ekξ2t \hat{u}(\xi,\ t) = \hat{f} (\xi) e^{-k\xi^{2}t}

両辺にフーリエ逆変換を取ると

u(x, t)=12πf^(ξ)ekξ2teiξxdξ \begin{equation} u(x,\ t) =\dfrac{1}{2\pi}\int \hat{f}(\xi) e^{-k\xi^{2} t}e^{i\xi x} d\xi \label{eq1} \end{equation}

これをuuに対するフーリエ積分公式と呼ぶ。この式をフーリエ変換と畳み込みの性質を利用して簡単に表すことができる。フーリエ変換の性質(d)(d)F[fg]=f^g^\mathcal{F} [f \ast g]=\hat{f}\hat{g}の両辺に逆変換を取ると

fg=F1[f^g^] f \ast g=\mathcal{F}^{-1}[\hat{f} \hat{g}]

(eq1)\eqref{eq1}ekξ2te^{-k\xi ^{2}t}をある関数のフーリエ変換だとする。具体的にはF[Kt](ξ)=ekξ2t\mathcal{F}[K_{t}] (\xi)=e^{-k\xi^{2} t}としよう。すると、式(eq1)\eqref{eq1}

u(x, t)=12πf^(ξ)Kt^(ξ)eiξxdξ=F1[f^Kt^](x)=fKt(x) \begin{align*} u(x,\ t) &= \dfrac{1}{2\pi} \int \hat{f}(\xi) \hat{K_{t}}(\xi) e^{i\xi x} d\xi \\ &= \mathcal{F}^{-1}[\hat{f}\hat{K_{t}}] (x) \\ &= f \ast K_{t}(x) \end{align*}

いま、KtK_{t}を求める番だ。最初に定義した式の両辺に逆変換を取ると

Kt(x)=F1F[Kt](x)=F1[ekξ2t]=12πekξ2teiξxdξ=12πekξ2teiξ(x)dξ=12πF[ekξ2t](x)=14πktex2/4ktdx \begin{align*} K_{t}(x)= \mathcal{F}^{-1} \mathcal{F}[K_{t}] (x) &= \mathcal{F}^{-1} \left[ e^{-k\xi ^{2} t} \right] \\ &= \dfrac{1}{2\pi} \int e^{-k\xi^{2} t}e^{i\xi x} d\xi \\ &= \dfrac{1}{2\pi} \int e^{-k\xi^{2} t}e^{-i\xi (-x)}d\xi \\ &= \dfrac{1}{2\pi} \mathcal{F} \left[e^{-k\xi^{2}t} \right] (-x) \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{4\pi kt}}e^{-x^{2}/4kt}dx \end{align*}

最後の数式は、ガウス関数のフーリエ変換公式で簡単に得られる。従って、これをuuに代入すると

u(x, t)=fKt(x)=f(y)Kt(xy)dy=14πktf(y)e(xy)2/4ktdy \begin{align*} u(x,\ t) &= f \ast K_{t}(x) \\ &= \int f(y) K_{t}(x-y) dy \\ &= \dfrac{1}{\sqrt{4 \pi kt}} \int f(y) e^{-(x-y)^{2}/4kt}dy \end{align*}

初めに与えられた微分方程式の条件にu(x, 0)=f(x)u(x,\ 0)=f(x)があったので、limt0u(x, t)=limt0fKt(x)=f(x)\lim \limits_{ t\rightarrow 0} u(x,\ t)=\lim \limits_{ t\rightarrow 0} f \ast K_{t}(x)=f(x)であれば、上記の問題に適切な解と言える。もちろん、実際に成り立ち、証明することができる。