logo

サイン波と複素波動関数 📂物理学

サイン波と複素波動関数

定義

波を三角関数で表したものをサイン波sinusoidal waveという。

説明

サイン波の一般的な形は以下の通りだ。式が$\cos$である理由は下で説明するが、それは複素波動関数の実部が$\cos$だからだ。$\sin$は虚部だ。

$$ f(x,t) = A \cos \big( k(x-vt)+\delta \big) $$

ここで、$A$を波の振幅amplitudeとし、コサイン関数の変数$k(z-vt)+\delta$を位相phase、$\delta$を位相定数phase constantという。位相定数に$2\pi$を加えても$f(x,t)$は変わらない。だから普通は位相定数として$0\le \delta \lt 2\pi$の範囲の値を使う。$k$は波数wave numberであり、波長wavelength$\lambda$とは次のような関係がある。

$$ k=\dfrac{2\pi}{\lambda} $$

波が完全に1回転する時間を周期periodという。時間=距離/速度なので、波の周期$T$は

$$ T=\dfrac{\lambda}{v} = \dfrac{2 \pi}{kv} $$

周期は1回振動するのにかかる時間なので、単位時間あたりの振動数である振動数frequency$\nu$は当然周期の逆数と同じだ。

$$ \nu=\dfrac{1}{T}=\dfrac{v}{\lambda} $$

角振動数angular frequencyは一般に$\omega$で表され、振動を等速円運動に対応させて表現するものだ。振動数を単位時間あたりの回転角度に変えた値であり、単位はラディアンだ。

$$ \omega=2\pi \nu=2\pi\dfrac{1}{T}=kv $$

$(1)$を角振動数で表したら

$$ f(x,t)=A \cos \big( kx-\omega t +\delta \big) $$

これは波数が$k$で角振動数が$\omega$のへ進行する波動関数だ。3.JPG

4.JPG

上の図のように、$\dfrac{\delta}{k}$を波動関数が原点から遅れた距離として定義する。だから、波の進行方向が変われば、位相定数の符号も変わる。波が左へ進むなら、右へ移動したのが遅れたということだ。つまり、波数が$k$で角振動数が$\omega$の左へ進行する波動関数は以下の通りだ。

$$ f(x,t)=A \cos \big( kx+\omega t -\delta \big) $$

でも、コサイン関数は偶関数なので、上の式は下の式と同じだ。 $$ f(x,t)=A \cos \big( -kx-\omega t +\delta \big) $$

これは、波数が$k$で角振動数が$\omega$の右へ進行する波動関数$(2)$と比較して、波数$k$の符号だけが異なる。つまり、波数$k$の符号を変えると、振幅、位相定数、振動数、波長などはすべて同じだが、進行方向だけが反対の波になることが分かる。

複素波動関数

波動関数がコサインで表されるので、オイラーの公式を使って複素指数関数の形でも表せる。虚部を広げて複素波動関数を扱う理由は、複素関数がコサインやサインよりも多くの面で計算に便利だからだ。$e^{ix}=\cos x +i\sin x$を使って$(2)$を表すと

$$ f(x,t)=\text{Re}(Ae^{i(kx-\omega t +\delta)}) $$

ここで、$\text{Re}(a+ib)=a$。すなわち実部を表す。$f$は$Ae^{i(kx-\omega t +\delta)}$の実部だけを表した関数なので、$\tilde{f}=Ae^{i(kx-\omega t +\delta)}$としよう。つまり、$\text{Re}(\tilde{f})=f$だ。すると、以下のように簡単に整理できる。

$$ \tilde{f}(x,t)=Ae^{i(kx-\omega t+\delta)}=Ae^{i\delta}e^{i(kx-\omega t)}=\tilde{A}e^{i(kx-\omega t)} $$

この記事で扱っている波動関数$f(x,t)$は複素波動関数の実部だ。

$$ f(x,t)=\text{Re}\big( \tilde{f}(x,t) \big) $$