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輸送方程式の初期値問題と非同次問題の解法 📂偏微分方程式

輸送方程式の初期値問題と非同次問題の解法

方程式

下記の偏微分方程式輸送方程式transport equationと言われている。

$$ u_{t} + b \cdot Du=0\quad \text{in }\mathbb{R}^n \times (0,\ \infty) $$

解法1

初期値問題

輸送方程式の初期値問題が以下のように与えられたとしよう。

$$ \begin{equation} \left\{ \begin{aligned} u_{t}+b \cdot Du &= 0 && \text{in } \mathbb{R}^n \times [0,\ \infty) \\ u &= g && \text{on } \mathbb{R}^n\times \left\{ t=0 \right\} \end{aligned} \right. \label{IVP} \end{equation} $$

$b \in \mathbb{R}^n$は輸送方程式において与えられる定数で、$g:\mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}$は初期値として与えられている。これによって$u$を得るのが問題である。$z$を次のように定義しよう。

$$ z(s):=u(x+sb,\ t+s)\quad (s \in \mathbb{R}) $$

すると、次を得る。

$$ z(-t)=u(x-tb,\ 0)=g(x-tb) $$

また、$z(s)$の値は$s$と無関係であるため、次が成り立つ。

$$ z(-t)=z(0)=u(x,\ t) $$

したがって、ソリューションは次の通りである。

$$ u(x,\ t)=g(x-tb) \ \ (x\in \mathbb{R}^n,\ t \ge 0) $$

逆に$u(x,\ t)=g(x-tb)$を満たす$g \in C^1(\mathbb{R}^n)$があれば、$u \in C^1$は$(1)$のソリューションとなる。

非同質問題

初期値問題で右辺の項が$0$でない場合である。

$$ \begin{equation} \left\{ \begin{aligned} u_{t}+b \cdot Du &= f && \text{in }\mathbb{R}^n \times [0,\ \infty) \\ u &= g && \mathrm{on }\mathbb{R}^n\times \left\{ t=0 \right\} \end{aligned} \right. \label{NHIVP} \end{equation} $$

上で定義した$z$について$\dot{z}$を求めると、次の通りである。

$$ \begin{align*} \dot{z}(s) &= \dfrac{dz}{ds} \\ &= \dfrac{\partial u}{\partial x}\dfrac{d x}{d s} + \dfrac{\partial u}{\partial t}\dfrac{d t}{d s} \\ &= Du(x+sb,\ t+s)\cdot b +u_{t}(x+sb,\ t+s) \\ &= f(x+sb,\ t+s) \end{align*} $$

したがって、次が成り立つ。

$$ \begin{align*} u(x,\ t)-g(x-tb)&=z(0)-z(-t) \\ &= \int_{-t}^0 \dot{z}(s) ds \\ &= \int_{-t}^0 f(x+sb,\ t+s)ds \\ &= \int_{0}^t f(x+(s-t)b,\ s)ds \end{align*} $$

4番目の等号は$s \equiv s^{\prime}+t$に置換えると成り立つ。それならば、$(2)$の解は次の通りである。

$$ u(x,\ t)=g(x-tb)+\int_{0}^t f(x+(s-t)b,\ s)ds\quad (x\in\mathbb{R}^n,\ t \ge 0) $$


  1. Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (2nd Edition, 2010), p18-19 ↩︎