ルジャンドル微分方程式の直列解法:ルジャンドル多項式
📂微分方程式ルジャンドル微分方程式の直列解法:ルジャンドル多項式
定義
以下の微分方程式をルジャンドルLegendre微分方程式と言う。
(1−x2)dx2d2y−2xdxdy+l(l+1)y=0
ルジャンドル微分方程式の解をルジャンドル多項式と言い、通常Pl(x)で示される。最初のいくつかのlによるルジャンドル多項式は次のようである。
P0(x)=P1(x)=P2(x)=P3(x)=P4(x)=P5(x)=⋮ 1 x 21(3x2−1) 21(5x3−3x) 81(35x4−30x2+3) 81(63x5−70x3+15x)
説明
ルジャンドル微分方程式は、次のような形で紹介されることもある。
dxd[(1−x)2dxdy]+l(l+1)y=0
これはシュツルム-リウヴィル理論Sturm-Liouville theoryで表されるものである。第一項を展開して整理すると、同じ式が得られる。ルジャンドル微分方程式を以下のように一般化したものを関連ルジャンドル微分方程式associated Legendre differential equationと言う。
(1−x2)dx2d2y−2xdxdy+(1−x2−m2+l(l+1))y=0
ここでm=0の場合、ルジャンドル微分方程式となる。
ルジャンドル方程式は物理学や工学などで登場し、特に球面座標系でのラプラス方程式を解く時に見ることができる。物理学科ならば、電磁気学で球面座標系での電位を計算する時、量子力学で球面座標系でのシュレディンガー方程式を解く時に出会うことがある。解法の過程が長いため、教科書では通常、ロドリゲス公式で表される解答のみを記載することが多い。実際、物理学の学生は解法が非常に非常に気になるわけではなければ、知らなくても問題はない。
解法
係数に独立変数xが含まれた形で、解が冪級数の形であると仮定すれば解くことができる。
(1−x2)y′′−2xy′+l(l+1)y=0
ルジャンドル微分方程式の解を次のように仮定しよう。
y=a0+a1(x−x0)+a2(x−x0)2+⋯=n=0∑∞an(x−x0)n
この時x=0の時、y′′の係数が(1−x2)∣x=0=1=0であるため、x0=0と置く。すると級数解は
y=a0+a1x+a2x2+⋯=n=0∑∞anxn
解を級数と仮定したが、解法の最後に実際にはyの項が有限であることがわかる。これで(1)に代入するためにy′とy′′を求めよう。
y′=a1+2a2x+3a3x2+⋯=n=1∑∞nanxn−1
y′′=2a2+3⋅2a3x+4⋅3a4x2+⋯=n=2∑n(n−1)anxn−2
これで(1)にy,y′,y′′を代入すると
(1−x2)n=2∑∞n(n−1)anxn−2−2xn=1∑∞nanxn−1+l(l+1)n=0∑∞anxn=0
第一項の係数(1−x2)の括弧を展開して整理すると
n=2∑∞n(n−1)anxn−2−x2n=2∑∞n(n−1)anxn−2−2xn=1∑∞nanxn−1+l(l+1)n=0∑∞anxn=0
⟹n=2∑∞n(n−1)anxn−2−n=2∑∞n(n−1)anxn−2n=1∑∞nanxn+l(l+1)n=0∑∞anxn=0
ここでのポイントは**xの次数を合わせること**である。他は全てxnで表されるのに対し、最初の級数だけがxn−2で表されているため、nの代わりにn+2を代入すると
n=0∑∞(n+2)(n+1)an+2xn−n=2∑∞n(n−1)anxn−2n=1∑∞nanxn+l(l+1)n=0∑∞anxn=0
二番目の級数がx2項から始まるので、他の級数からn=0,1の項を外して、定数項は定数項同士、1次項は1次項同士をまとめると
[2⋅1a2+l(l+1)a0]+[3⋅2a3−2a1+l(l+1)a1]x+n=2∑∞[(n+2)(n+1)an+2−n(n+1)an−2nan+l(l+1)an]xn=0
上の式が成り立つためには全ての係数が0でなければならない。
2⋅1a2+l(l+1)a0=0
3⋅2a3−2a1+l(l+1)a1=0
(n+2)(n+1)an+2−n(n+1)an−2nan+l(l+1)an=0
それぞれを整理すると
a2=−2⋅1l(l+1)a0
a3=−3⋅2(l+2)(l−1)a1
an+2=−(n+2)(n+1)(l+n+1)(l−n)an
(3),(4),(5)を利用すると、a0とa1の値だけを知っていれば全ての係数を知ることができる。(3)と(5)で偶数次項の係数を求めると
a4=a6=⋮ −4⋯3(l+3)(l−2)a2=4!l(l−2)(l+1)(l+3)a0 −6⋅5(l+5)(l−4)a4=−6!l(l−2)(l−4)(l+1)(l+3)(l+5)a0
n=2m (m=1,2,3,⋯)とすると
an=a2m=(−1)m(2m)!l(l−2)⋯(l−2m+4)(l−2m+2)(l+1)(l+3)⋯(l+2m−3)(l+2m−1)a0
同様に(4)、(5)で奇数次項の係数を求めると
a5=a7=⋮ −5⋅4(l+4)(l−3)a3=5!(l+2)(l+4)(l−1)(l−3)a1 −7⋅6(l+6)(l−5)a5=−7!(l+2)(l+4)(l+6)(l−1)(l−3)(l−5)a1
n=2m+1 (m=1,2,3,⋯)とすると
an=a2m+1=(−1)m(2m+1)!(l+2)(l+4)⋯(l+2m−2)(l+2m)(l−1)(l−3)⋯(l−2m+3)(l−2m+1)a1
これで求めた係数を(2)に代入して解を求めると
y=\a0+a1x−2!l(l+1)a0x2−3!(l+2)(l−1)a1x3+4!l(l−2)(l+1)(l+3)a0x4+5!(l+2)(l+4)(l−1)(l−3)a1x5+⋯+(−1)m(2m)!l(l−2)⋯(l−2m+4)(l−2m+2)(l+1)(l+3)⋯(l+2m−3)(l+2m−1)a0x2m+(−1)m(2m+1)!(l+2)(l+4)⋯(l+2m−2)(l+2m)(l−1)(l−3)⋯(l−2m+3)(l−2m+1)a1x2m+1+⋯
(m=1,2,3,⋯)偶数次項はa0で、奇数次項はa1でまとめると
y=\a0[1−2!l(l+1)x2+4!l(l−2)(l+1)(l+3)x4+m=3∑∞(−1)m(2m)!l(l−2)⋯(l−2m+4)(l−2m+2)(l+1)(l+3)⋯(l+2m−3)(l+2m−1)x2m]+a1[x−3!(l+2)(l−1)x3+5!(l+2)(l+4)(l−1)(l−3)x5+m=3∑∞(−1)m(2m+1)!(l+2)(l+4)⋯(l+2m−2)(l+2m)(l−1)(l−3)⋯(l−2m+3)(l−2m+1)x2m+1]
最初の括弧をy0、二番目の括弧をy1とすると、ルジャンドル方程式の一般解は次のようになる。
y=a0y0+a1y1
二つの級数y0とy1は比率判定法により、∣x∣<1の範囲で収束
することがわかる。(5)によりanan+2=−(n+2)(n+1)(l+n+1)(l−n)=(n+2)(n+1)(n+l+1)(n−l)であるため、比率判定法を使うと
n→∞lim(n+2)(n+1)(n+l+1)(n−l)x2=x2<1
⟹−1<x<1
しかし、多くの問題でx=cosθ、lは非負の整数の形で式が現れ、全てのθに対して収束する解を得たい。つまり、x=±1でも収束する解を見つけることが目標である。幸いにもlが整数の時は、欲しい解が存在し、その時lの値によって必ずy0,y1のどちらかの解のみが存在する。lが0か偶数の時はy1が発散し、y0は偶数次項のみを持つ有限項の多項式となる。lが奇数ならばy0が発散し、y1は奇数次項のみを持つ有限項の多項式となる。表にまとめると以下のようになる。
lの値 | y0 | y1 | 方程式の解 |
---|
0か偶数 | 有限項の多項式 | 発散 | y=a0y0 |
奇数 | 発散 | 有限項の多項式 | y=a1y1 |
ケース1. lが0か偶数
l=0の時、2次項からlを因数に持ち、全て0になるので、y0=1
l=2の時、4次項から(l−2)を因数に持ち、全て0になるので、y0=1−3x2
l=4の時、6次項から(l−4)を因数に持ち、全て0になるので、y0=1−10x2+335x4
そしてl=0の時、x2=1からy1=1+31+51+⋯であるが、これは積分判定法により発散する。他の偶数の時も同様である。したがって、lが0か偶数の時は、解が偶数次項のみを持つ有限項の多項式となる。つまり、級数y0の特定の項までのみ残る形の解を得る。
ケース2. lが奇数
偶数の時と反対の結果が現れる。
l=1の時、3次項から(l−1)を因数に持ち、全て0になるので、y1=x
l=3の時、5次項から(l−3)を因数に持ち、全て0になるので、y1=x−35x3
l=5の時、7次項から(l−5)を因数に持ち、全て0になるので、y1=x−314x3+521x5
l=1の時、x2=1からy0は発散し、他の奇数の時も同様である。したがって、lが奇数の時は、解が奇数次項のみを持つ有限項の多項式となる。つまり、級数y1の特定の項までのみ残る形の解を得る。
そして、lが負の場合は、lが0ではない整数の場合と同じであることがy0とy1を見ればわかる。例えば、l=2の場合とl=−3の場合が同じであり、l=1の場合とl=−2の場合が同じである。したがって、lが非負の整数についてのみ考えれば良い。a0とa1の値を上手く選んでx=1の時の解がy(x)=1になるようにすると、これをルジャンドル多項式Legendre polynomialと言い、Pl(x)と書く。最初のいくつかのルジャンドル多項式は以下の通りである。
P0(x)=P1(x)=P2(x)=P3(x)=P4(x)=P5(x)= 1 x 21(3x2−1) 21(5x3−3x) 81(35x4−30x2+3) 81(63x5−70x3+15x)
この結果はロドリゲス公式Rodrigues’ formulaで直接得ることもできる。
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