ポテンシャルの性質
電位の基準点1
電位の定義は次の通りだ。
$$ V(\mathbf{r} ) \equiv - \int _\mathcal{O} ^{\mathbf{r}} \mathbf{E} \cdot d \mathbf{l} $$
したがって、基準点$\mathcal{O}$によって、その値が変わる可能性がある。例えば、新しく基準点$\mathcal{O}^{\prime}$を設定すると、ある定数$K$の差が生じる。
$$ \begin{align*} V^{\prime} (\mathbf{r} ) =&\ -\int _{\mathcal{O}^{\prime}}^\mathbf{r} \mathbf{E} \cdot d\mathbf{l} \\ =&\ -\int _{\mathcal{O}^{\prime}} ^\mathcal{O} \mathbf{E} \cdot d\mathbf{l} -\int_\mathcal{O} ^\mathbf{r} \mathbf{E} \cdot d \mathbf{l} \\ =&\ K + V( \mathbf{r} ) \end{align*} $$
$K$は、電場$\mathbf{E}$を$\mathcal{O}$から$\mathcal{O}^{\prime}$まで線積分した値である。ここで重要なのは、基準点によって電位$V$の値は変わるかもしれないが、電場$\mathbf{E}$の値は変わらないということだ。
定数の微分は$0$であるため、
$$ \nabla V^{\prime} = \nabla (K+V)=\nabla K + \nabla V = \nabla V $$
したがって、
$$ \nabla V^{\prime} =\nabla V =\mathbf{E} $$
基準点をどこに設定しても電場には影響しないため、電位を扱う際に非常に大きな利点となる。重要なのは、電位自体ではなく、二点間の電位差である。電位差もまた、基準点の設定方法とは無関係であることが示される。
$$ V^{\prime}( \mathbf{b} ) -V^{\prime}( \mathbf{a} ) = \left[ K + V( \mathbf{b} ) \right] - \left[ K +V( \mathbf{a} ) \right]= V(\mathbf{b}) - V( \mathbf{a}) $$
重ね合わせの原理
電場と同様に、電位も重ね合わせの原理に従う。全体の電位は、各々のソース電荷が作る電位を単純に加算するだけでよいということだ。$V=V_{1}+V_2+V_{3}+\cdots$であり、$\mathbf{E}_{i}=-\nabla V_{i}$であるとしたら、
$$ \begin{align*} \mathbf{E} =&\ \mathbf{E}_{1}+\mathbf{E}_2+\mathbf{E}_{3}+\cdots \\ =&\ -\nabla V_{1} -\nabla V_2 -\nabla V_{3} -\cdots \\ =&\ -\nabla (V_{1}+V_2+V_{3}+\cdots) \\ =&\ -\nabla V \end{align*} $$
David J. Griffiths, 基礎電磁気学(Introduction to Electrodynamics, 金振成訳) (第4版, 2014), p88-90 ↩︎