ベクトル空間のリフレクシブ
📂線形代数ベクトル空間のリフレクシブ
定義
Xをベクトル空間、X∗∗をバイデュアルとする。X∗∗≈Xならば、Xはリフレクシブreflexiveと言われる。
説明
一般に、ベクトル空間はデュアルを取るたびにサイズが大きくなる。しかし、リフレクシブであることは事実上、デュアルスペースが無限に大きくならない空間と見なすことができる。リフレクシブな空間の例は以下の通り。
ℓp空間に関する証明を紹介する。
証明
戦略:この証明のためだけに使われる関数sign:C→Rを定義しよう。
sign(λ):=⎩⎨⎧λ∣λ∣1,λ=0,λ=0
定義により、λsign(λ)=∣λ∣である。これは広く使用されている複素数の符号signの定義と少し異なることに注意。
まず、p1+q1=1に対してℓp∗≈ℓqであることを示す。写像ϕ:ℓp∗→ℓqをf∈ℓp∗に対してϕ(f)=(f(e1),f(e2),…)と定義しよう。ここでejはj番目の成分だけが1で他は0の単位ベクトルej:=(…,0,1,0,…)を意味する。
いま、yj:=(∑j=1n∣f(ej)∣q)p1sign(fq(ej))fq−1(ej)∈Cを含むyj:=(∑j=1n∣f(ej)∣q)p1sign(fq(ej))fq−1(ej)∈Cを定義しよう。全てのλ∈Cに対して∣λ∣=1なので、
∥y1e1+⋯+ynen∥pp=j=1∑n∣yj∣p=j=1∑n(∑j=1n∣f(ej)∣q)1⋅∣f(ej)∣(q−1)p
(q−1)p=qだから、
∥y1e1+⋯+ynen∥pp=1
f∈ℓp∗は線形だから、
===f(y1e1+⋯+ynen)y1f(e1)+⋯+ynf(en)(∑j=1n∣f(ej)∣q)p11(sign(fq(e1))fq−1(e1)f(e1)+⋯+sign(fq(en))fq−1(en)f(en))(∑j=1n∣f(ej)∣q)p11(sign(fq(e1))fq(e1)+⋯+sign(fq(en))fq(en))
λsign(λ)=∣λ∣
signの性質により、
f(y1e1+⋯+ynen)===(∑j=1n∣f(ej)∣q)p11(∣f(e1)∣q+⋯+∣f(en)∣q)(j=1∑n∣f(ej)∣q)1−p1(j=1∑n∣f(ej)∣q)q1
パート1. (j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1≤∥f∥
fは有界だから、全てのn∈Nに対して
(j=1∑n∣f(ej)∣q)q1≤∥f∥∥y1e1+⋯+ynen∥p
∥y1e1+⋯+ynen∥pp=1から、まとめると
(j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1≤∥f∥
パート2. ϕは関数だ。
**パート1.**から∣ϕ(f)∣=(j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1≤∥f∥<∞だからϕ(f)∈ℓq
パート3. ϕは線形だ。
f,g∈ℓp∗とλ∈Cに対して
ϕ(λf+g)====((λf+g)e1,…)(λf(e1)+g(e1),…)(λf(e1),…)+(g(e1),…)λϕ(f)+ϕ(g)
パート4. ϕは単射だ。
f,g∈ℓp∗についてϕ(f)=ϕ(g)とすると、全てのj∈Nに対してf(ej)=g(ej)が必要。(xj)∈ℓqとすれば
f((xj))=f(n→∞lim(x1e1+⋯+xnen))
ϕは線形だから連続であり
f(n→∞lim(x1e1+⋯+xnen))======n→∞limf(x1e1+⋯+xnen)n→∞lim(x1f(e1)+⋯+xnf(en))n→∞lim(x1g(e1)+⋯+xng(en))n→∞limg(x1e1+⋯+xnen)g(n→∞lim(x1e1+⋯+xnen))g((xj))
まとめると
ϕ(f)=ϕ(g)⟹f=g
パート5. ϕは全射だ。
任意の(λj)∈ℓqに対して、ϕ(f0)=(λj)を満たすf0∈ℓp∗が存在することを示せばいい。関数f0:ℓp→Cをf0((xj)):=j=1∑∞xjλjとして定義しよう。そうすると、(xj),(yj)∈ℓpに対して
f0(λ(xj)+(yj))====f0((λxj+yj))j=1∑∞(λxj+yj)λjλj=1∑∞xjλj+j=1∑∞yjλjλf((xj))+f((yj))
これにより、f0は線形だ。また、ヘルダーの不等式により
∥f0∥=∥(xj)∥p=1supj=1∑∞xjλj≤∥(xj)∥p=1sup(j=1∑∞∣xj∣p)p1(j=1∑∞∣λj∣q)q1<∞
これにより、f0は有界で、結論としてf0∈ℓp∗である。このf0は
ϕ(f0)=(f0(e1),f0(e2),…)=(j=1∑∞e1λj,j=1∑∞e2λj,…)=(λ1,λ2,…)=(λj)
を満たす。
パート6. ϕはノルムを保つ。
∥ϕ(f)∥q=∥f∥であることを示せばいい。
∥f∥==≤==∥(xj)∥p=1sup∣f((xj))∣∥(xj)∥p=1supj=1∑∞(xj)f(ej)∥(xj)∥p=1supj=1∑∞∣(xj)∣∣f(ej)∣≤∥(xj)∥p=1sup(j=1∑∞∣xj∣p)p1(j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1(j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1∥ϕ(f)∥q
しかし、**パート1.**で(j=1∑∞∣f(ej)∣q)q1≤∥f∥だったので
∥f∥≤∥ϕ(f)∥q≤∥f∥
まとめると
∥ϕ(f)∥q=∥f∥
**パート2.からパート6.**までをまとめると、ϕは等長写像であることがわかる。つまり、p1+q1=1に対してℓp∗≈ℓqを示した。
パート7.
ℓp∗≈ℓqとすると、ℓp∗∗≈ℓq∗である。等長写像は同値関係であり、同値関係の推移性により
ℓp∗∗≈ℓp
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