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ヴァンデルモンド行列の行列式の導出 📂行列代数

ヴァンデルモンド行列の行列式の導出

定義

異なる $1, x_{1} , x_{2 } , \cdots , x_{n}$ に対して、次のように定義された行列 $V_{n}$ をヴァンデルモンド行列vandermonde matrixという。

$$ V_{n} := \begin{bmatrix} 1 & x_{1} & x_{1}^{2} & \cdots & x_{1}^{n-1} \\ 1 & x_{2} & x_{2}^{2} & \cdots & x_{2}^{n-1} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 1 & x_{n} & x_{n}^{2} & \cdots & x_{n}^{n-1} \end{bmatrix} $$

公式

$V_{n}$ の行列式は

$$ \det V_{n} = \prod_{1 \le i < j \le n } (x_{j} - x_{i}) $$

説明

ヴァンデルモンド行列は特徴的な形をしているが、意外にも微分方程式の数値解析で出てくるなど、よく見ることが多い。

$1, x_{1} , x_{2 } , \cdots , x_{n}$ が異なるという仮定から $\displaystyle \prod_{ 1 \le i < j \le n } (x_{j} - x_{i}) \ne 0$ であり、$V_{n}$ の可逆性が保証される。この事実は主に連立方程式 $\mathbf{w} = V_{n} \mathbf{u}$ の唯一解が存在することを示すのに使われる。

導出

策略:様々な方法で示せるが、特に数学的帰納法を使った証明を紹介する。この証明は数学的な知識がある程度必要だが、行操作などをしないため、計算が少なくて済むし、スッキリしていていい。途中で出てくる因数定理代数学の基本定理は重要な事実だが、証明の文脈では重要ではないので、知らなくても大丈夫だ。

命題 $\displaystyle P(n) : \det V_{n} = \prod_{ 1 \le i < j \le n } (x_{j} - x_{i})$ を定義しよう。

**パート1. $n=1,2$

$$ P(1) : \det V_{1} = | 1 | = 1 \\ P(2) : \det V_{2} = \left| \begin{matrix} 1 & x_{1} \\ 1 & x_{2} \end{matrix} \right| = x_{2} - x_{1} $$

したがって、$P(n)$ は $n=1,2$ の時に成り立つ。

**パート2. $n=k$

$\displaystyle P(k) : \det V_{k} = \prod_{1 \le i < j \le k } (x_{j} - x_{i})$ が成り立つと仮定しよう。

**パート3. $n=k+1$

$k+1$ 番目の変数として $x$ を追加した以下のヴァンデルモンド行列を新たに定義してみよう。

$$ V_{k}’ := \begin{bmatrix} 1 & x_{1} & x_{1}^{2} & \cdots & x_{1}^{k} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 1 & x_{k} & x_{k}^{2} & \cdots & x_{k}^{k} \\ 1 & x & x^{2} & \cdots & x^{k} \end{bmatrix} $$

正方行列 $A_{n \times n} = (a_{ij})$ の $i$ 番目と $j$ 番目の行を取り除いた行列の行列式 $M_{ij}$ と余因子 $C_{ij} := (-1)^{i + j} M_{ij}$ を定義しよう。選択された $i$ 行に対して、$\displaystyle \det A = \sum_{j=1}^{n} a_{ij} C_{ij} $

$(k+1)$ 行を選択すると、ラプラス展開により $V_{k} ' $ の行列式

$$ \det V_{k} ' = 1 C_{(k+1)1} + x C_{(k+1)2} + x^2 C_{(k+1)3} + \cdots + x^{k} C_{(k+1)(k+1)} $$

として、$x$ に対する $k$ 次の多項式 $f(x)$ で表される。ここで、$x$ に $x_{1} , \cdots , x_{k}$ を代入してみると行列 $V_{k} ' $ に完全に同じ二行ができるので、行列式は $0$ になる。多項式 $f(x)$ を使って言い換えると

$$ f(x_{1}) = \cdots = f(x_{k}) = 0 $$

因数定理代数学の基本定理により、$f(x)$ はある定数 $C$ に対して正確に

$$ f(x) := C(x-x_{1})(x-x_{2}) \cdots (x-x_{k}) $$

と表せる。一方、$x^{k}$ の係数 $C_{(k+1)(k+1)}$ は$(k+1)$行目と$(k+1)$列目に対する余因子なので

$$ C_{(k+1)(k+1)} = (-1)^{(k+1)+(k+1)} \det \begin{bmatrix} 1 & x_{1} & x_{1}^{2} & \cdots & x_{1}^{k-1} \\ 1 & x_{2} & x_{2}^{2} & \cdots & x_{2}^{k-1} \\ \vdots & \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ 1 & x_{k} & x_{k}^{2} & \cdots & x_{k}^{k-1} \end{bmatrix} =1 \cdot \prod_{1 \le i < j \le k } (x_{j} - x_{i}) $$

つまり、$\displaystyle C = C_{(k+1)(k+1)}$ であるため

$$ \det V_{k} ' = f(x) = \left[ \prod_{1 \le i < j \le k } (x_{j} - x_{i}) \right] \left[ (x-x_{1})(x-x_{2}) \cdots (x-x_{k}) \right] $$

便宜上$x_{k+1} := x$ として再定義すれば、$V_{k} ' = V_{k+1}$ であり、

$$ P(k+1) : \det V_{k+1} = \prod_{1 \le i < j \le k+1 } (x_{j} - x_{i}) $$

これが成り立つことがわかる。$P(k)$ が真であるとき、$ P(k+1)$ が真であるので、数学的帰納法により証明が完了する。