マルチステップ法の根の条件
定義 1
マルチステップ法: $D \subset \mathbb{R}^2$ で定義された連続関数と初期値問題 $\begin{cases} y ' = f(x,y) \\ ( y( x_{0} ) , \cdots , y(x_{p}) ) = (Y_{0}, \cdots , Y_{p} ) \end{cases}$ が区間 $(a,b)$ 上で与えられている。区間を $a \le x_{0} < x_{1} < \cdots < x_{n} < \cdots x_{N} \le b$ のようなノードポイントで分割しよう。特に $h > 0$ が十分に小さい場合に、$x_{j} = x_{0} + j h$ とし、初期値と $0 \le p \le m$ に対して $a_{p} \ne 0$ もしくは $b_{p} \ne 0$ を満たす場合、これを$(p+1)$-ステップ法という。 $$ y_{n+1} = \sum_{j=0}^{p} a_{j} y_{n-j} + h \sum_{j = -1}^{p} b_{j} f (x_{n-j} , y_{n-j} ) $$
マルチステップ法の一貫性: マルチステップ法が一貫性を持つための必要十分条件は $\begin{cases} \displaystyle \sum_{j = 0}^{p} a_{j} = 1 \\ \displaystyle - \sum_{j = 0}^{p} j a_{j} + \sum_{j = -1}^{p} b_{j} = 1 \end{cases}$ である
一貫性を持ったマルチステップ法について、$\displaystyle \rho ( r) = r^{p+1} - \sum_{j=0}^{p} a_{j} r^{p-j}$ とする。方程式 $\rho (r ) = 0$ の根 $r_{0} , \cdots , r_{p}$ が以下の条件を満たす場合、与えられたマルチステップ法は ルート条件root conditionを満たしていると言える。
- (i): $| r_{j} | \le 1$
- (ii): $|r_{j}| = 1 \implies \rho ‘(r_{j}) \ne 0$
説明
(i)はすべての根が複素平面上のユニットサークル $\left\{ z \ | \ |z| \le 1 \right\}$ 内にあることを意味する。 (ii)は $\left\{ z \ | \ |z| \le 1 \right\}$ の境界にある根が重根でないことを意味する。
一貫性という条件があれば、 $\displaystyle \sum_{j = 0}^{p} a_{j} = 1$ なので、自明な根 $r_{0} = 1$ から始めることができる。このルート条件は、一貫性を持ったマルチステップ法における収束性と同等であり、安定性とも同等である。パラサイトソリューションは、ルート条件に直接違反する例であり、弱い安定性を持っているとされる。
上記のように説明された同等関係から、次の推論を得る。
定理
もしマルチステップ法が一貫性を持つならば、その方法は安定性 $\iff$ を持ち、その方法は収束性を持つ
Atkinson. (1989). An Introduction to Numerical Analysis(2nd Edition): p732. ↩︎