位相数学における連続的性質とは?
ビルドアップ:部分空間
位相空間 $(X, \mathscr{T})$ について、$Y \subset X$ とする。
$\mathscr{T}’ := \left\{ U \cap Y \ | \ U \in \mathscr{T} \right\}$ としたら、$(Y , \mathscr{T}’ )$ は $X$ の部分空間subspaceになり、$\mathscr{T} ' $ を $\mathscr{T}$ によって誘引される $Y$ の部分位相subspace Topologyという。
- [1]: $A \subset Y$ が $Y$ で閉じた部分集合であるための必要十分条件は、$A = C \cap Y$ を満たす閉じた部分集合 $C \subset X$ が存在することだ。
- [2]: $y \in Y$ に対して、$N \subset Y$ が $y$ の近傍であるための必要十分条件は、$N = Y \cap n '$ を満たす $y$ の近傍 $N ' \subset X$ が存在することだ。
新しく形成される部分位相は、元の空間の性質を持っている保証が全くないことに注意が必要だ。したがって、以下のような概念を考えざるを得ない。
定義
$X$ 位相的性質 $P$ について、$X$ の全ての部分空間が $P$ を持つとき、$P$ を遺伝的性質hereditaryという。
遺伝的性質の例としては、以下のようなものがある。
- (1): 第一可算性
- (2): 第二可算性
- (3): 距離化可能性
- (4): ハウスドルフ性
一般化を追究する性質自体が数学者の本能とも言えるが、「必要か?」という質問に答えるわけではない。しかし、全体で証明された定理が部分でも通じるなら、自然に部分よりも全体を研究する方が効率的で必要になる。全体の性質が部分で保持されるかどうかの問題は、数学を研究する最も重要な理由と言っても過言ではない。
逆に、遺伝的性質でない場合は、反例を考える価値がある。位相的性質であるが遺伝的性質でない例は、以下の通り。
反証
(-1)
位相的性質でありながら遺伝的性質でない反例を示そう。
$\mathbb{R}^{2}$ の部分集合 $$ X = \left\{ (0,1) \right\} \cup \left\{ (x,0) \ | \ x \in \mathbb{R} \right\} \\ \mathscr{T} = \left\{ \emptyset \right\} \cup \left\{ U \ | \ (0,1) \in U \subset X \right\} $$ を考えると、$\left( X , \mathscr{T} \right)$ は位相空間になり、部分集合 $$ Y = \left\{ (0,1) \ | \ x \in \mathbb{R} \right\} \subset X $$ は部分空間 $\left( Y , \mathscr{T} ' \right)$ を形成できる。$\mathscr{T}$ の定義により、全ての $U \subset \mathscr{T}$ に対して $$ \left\{ (0,1) \right\} \cap U \ne \emptyset $$ であるため、$\left\{ (0,1) \right\}$ は $X$ で稠密である。単一要素集合 $\left\{ (0,1) \right\}$ は可算であるため、$X$ は可分空間である。一方 $$ Y = \left\{ (x, 0) \ | \ x \in \mathbb{R} \right\} \subset X $$ で部分空間 $\left( Y, \mathscr{T} ' \right)$ を形成する。しかし、 $$ \mathscr{T} ' = \left\{ U \cap Y \ | \ U \in \mathscr{T} \right\} = \mathscr{P} (\mathbb{R}) = \mathscr{P} (Y) $$ つまり、$Y$ は離散空間になる。
稠密性の判定法: $A$ が $X$ で稠密であることと、$X$ の全ての開集合 $U$ に対して $U \cap A \ne \emptyset$ が成り立つことは同値である。
離散空間では、全ての $U \in \mathscr{T} ' = \mathscr{P} (Y)$ に対して $$ U \cap ( Y \setminus U ) = \emptyset $$ であるため、$Y$ の任意の可算部分集合 $U \subset \mathscr{P} (Y)$ を取っても、$U \cap U^{c} = \emptyset$ を満たす開集合 $U^{c} \in \mathscr{T} ' $ が存在し、$U$ は稠密性を持たない。したがって、$Y$ は可分空間になることができない。
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(-2)
位相的性質でありながら遺伝的性質でない反例を示そう。ユークリッド空間 $\mathbb{R}$ の部分集合 $X : = (-1,0) \cup (0,1)$ を考えると、$\mathbb{R}$ の部分空間 $X$ は非連結空間である。
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