ケイリー・ハミルトンの定理
定義1
$T : V \to V$を有限次元のベクトル空間上の線形変換$V$とする。$f(t)$を$T$の特性多項式とする。それならば、以下が成り立つ。
$$ f(T) = T_{0} $$
ここで、$T_{0}$は零変換である。すなわち、線形変換は自分自身の特性多項式を満たす。この定理を行列の観点から書き直すと、
帰結
$$ f(A) = O $$
説明
店主と同年代の客は、高校から行列について学んだはずで、その時に見たのがこのケーリー・ハミルトンの定理である。(実際、ロピタルの定理と同様に教育課程にはなかったそうだ2)
2次の正方行列$A = \begin{bmatrix} a & b \\ c & d \end{bmatrix}$について、以下が成り立つ。 $$ A^{2} -(a + d)A + (ad - bc)I = O $$
証明
示すべきことは、すべての$\mathbf{v} \in V$に対して、$f(T)(\mathbf{v}) = \mathbf{0}$が成り立つことである。$T$が線形変換であるため、$\mathbf{v} = \mathbf{0}$の場合は自明である。$\mathbf{v} \ne \mathbf{0}$と仮定しよう。
$W$を$\mathbf{v}$によって生成される$T$-巡回部分空間とし、$k = \dim(W)$とする。
$\left\{ \mathbf{v}, T\mathbf{v}, \dots, T^{k-1}\mathbf{v} \right\}$は$W$の基底である。
もし$a_{0}\mathbf{v} + a_{1}T \mathbf{v} + \cdots + a_{k-1}T^{k-1} \mathbf{v} + T^{k}\mathbf{v} = \mathbf{0}$ならば、制限写像$T|_{W}$の特性多項式は $$ f(t) = (-1)^{k}\left( a_{0} + a_{1}t + \cdots +a_{k-1}t^{k-1} + t^{k} \right) $$
補題1.により、以下を満たす定数$a_{0}, a_{1}, \dots, a_{k-1}$が存在する。
$$ \begin{equation} a_{0}\mathbf{v} + a_{1}T\mathbf{v} + \cdots + a_{k-1}T^{k-1}\mathbf{v} + T^{k}\mathbf{v} = \mathbf{0} \end{equation} $$
そこで、補題2.により、制限写像$T|_{W}$の特性多項式は次の通りである。
$$ \begin{equation} g(t) = (-1)^{k}\left( a_{0} + a_{1}t + \cdots +a_{k-1}t^{k-1} + t^{k} \right) \end{equation} $$
したがって、$(1)$と$(2)$により、以下を得る。
$$ g(T)(\mathbf{v}) = (-1)^{k}\left( a_{0}I + a_{1}T + \cdots +a_{k-1}T^{k-1} + T^{k} \right)(\mathbf{v}) = \mathbf{0} $$
$W$が$T$-不変部分空間であれば、$T|_{W}$の特性多項式は$T$の特性多項式を割る。
上記の補題により、$g(t)$は$T$の特性多項式$f(t)$を割る。従って、ある多項式$q(t)$に対して、$f(t) = q(t)g(t)$が成立する。したがって、
$$ f(T)(\mathbf{v}) = q(T)g(T)(\mathbf{v}) = g(T)\left( g(T)(\mathbf{v}) \right) = g(T)(\mathbf{0}) = \mathbf{0} $$
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Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p317 ↩︎
https://namu.wiki/w/%EC%BC%80%EC%9D%BC%EB%A6%AC-%ED%95%B4%EB%B0%80%ED%84%B4%20%EC%A0%95%EB%A6%AC#s-2 ↩︎