断面曲率が同じであれば、リーマン曲率も同じである。
定理1
$V$を$2$次元以上のベクトル空間で定義されているものとし、$\left\langle \cdot, \cdot \right\rangle$を$V$に定義された内積とする。$R : V \times V \times V \times V \to V$と$R^{\prime} : V \times V \times V \times V \to V$を以下の条件を満たす多重線形関数とする。
$$ R(x,y,z,w) = \left\langle R(x,y)z, w \right\rangle,\quad R^{\prime}(x,y,z,w) = \left\langle R^{\prime}(x,y)z, w \right\rangle $$
$$ \begin{align*} R(x, y, z, w) + R(y, z, x, w) + R(z, x, y, w) &= 0 \tag{a}\\ R(x, y, z, w) &= - R(y, x, z, w) \tag{b}\\ R(x, y, z, w) &= - R(x, y, w, z) \tag{c}\\ R(x, y, z, w) &= R(z, w, x, y) \tag{d} \end{align*} $$
線形独立な2つのベクター $x, y$に対して、$K, K^{\prime}$は以下とする。
$$ K(\sigma) = \dfrac{R(x,y,x,y)}{\left\| x \times y \right\|^{2}},\quad K^{\prime}(\sigma) = \dfrac{R^{\prime}(x,y,x,y)}{\left\| x \times y \right\|^{2}} $$
ここで、$\sigma$は基底が$\left\{ x, y \right\}$の$2$次元部分空間である。全ての$\sigma \subset V$に対して$K(\sigma) = K^{\prime}(\sigma)$であれば、$R = R^{\prime}$である。
説明
定理で言及されている$R$はリーマン曲率テンソルを意味し、$K$は断面曲率を意味する。
この定理は、私たちが$2$次元部分空間についての情報だけでも、リーマン曲率テンソル$R$を知ることができると言っている。
証明
証明は難しくない、計算をこなせばいい。
主張: $R(x,y,z,w) = R^{\prime}(x,y,z,w)\quad \forall x,y,z,w \in V$
まず、$K, K^{\prime}$の定義により、以下が成り立つことは確かである。
$$ \begin{equation} K(\sigma) = K^{\prime}(\sigma) \implies R(x,y,x,y) = R^{\prime}(x,y,x,y) \end{equation} $$
したがって、以下を得る。
$$ R(x+z, y, x+z, y) = R^{\prime}(x+z, y, x+z, y) $$
これは $R, R^{\prime}$の線形性により以下のようになる。
$$ \begin{align*} R(x,y,x,y) + R(z,y,x,y)\quad &= R^{\prime}(x,y,x,y) + R^{\prime}(z,y,x,y) \\ \quad + R(x,y,z,y) + R(z,y,z,y) &\quad + R^{\prime}(x,y,z,y) + R^{\prime}(z,y,z,y) \end{align*} $$
両辺の最初と四番目の項は$(1)$により消去できる。
$$ R(z,y,x,y) + R(x,y,z,y) = R^{\prime}(z,y,x,y) + R^{\prime}(x,y,z,y) $$
それから$(d)$によって各辺の最初の項を交換すると以下のようになる。
$$ \begin{align*} && R(x,y,z,y) + R(x,y,z,y) &= R^{\prime}(x,y,z,y) + R^{\prime}(x,y,z,y) \\ \implies && R(x,y,z,y) &= R^{\prime}(x,y,z,y) \tag{2} \end{align*} $$
$(2)$から以下の式を得る。
$$ R(x, y+w, z, y+w) = R^{\prime}(x, y+w, z, y+w) $$
これも同様に線形性によって以下のように分けられる。
$$ \begin{align*} R(x,y,z,y) + R(x,w,z,y)\quad &= R^{\prime}(x,y,z,y) + R^{\prime}(x,w,z,y) \\ \quad + R(x,y,z,w) + R(x,w,z,w) &\quad + R^{\prime}(x,y,z,w) + R^{\prime}(x,w,z,w) \end{align*} $$
両辺の最初と四番目の項は$(2)$により互いに消去される。
$$ \begin{align*} && R(x,w,z,y) + R(x,y,z,w) &= R^{\prime}(x,w,z,y) + R^{\prime}(x,y,z,w) \\ \implies && R(x,y,z,w) -R^{\prime}(x,y,z,w) &= R^{\prime}(x,w,z,y) - R(x,w,z,y) \end{align*} $$
右辺の2項に$(b), (d)$を使うと、
$$ R(x,y,z,w) -R^{\prime}(x,y,z,w) = R(y,z,x,w) - R^{\prime}(y,z,x,w) $$
この式から再び以下を得る。
$$ \begin{equation} \begin{aligned} R(x,y,z,w) -R^{\prime}(x,y,z,w) &= R(y,z,x,w) - R^{\prime}(y,z,x,w) \\ &= R(z,x,y,w) - R^{\prime}(z,x,y,w) \end{aligned} \end{equation} $$
今度は$(a)$から以下を得る。
$$ R(x,y,z,w) + R(y,z,x,w) + R(z,x,y,w) = 0 \\ R^{\prime}(x,y,z,w) + R^{\prime}(y,z,x,w) + R^{\prime}(z,x,y,w) = 0 $$
上記の式から下記の式を引くと、以下のようになる。
$$ \left( R(x,y,z,w) - R^{\prime}(x,y,z,w) \right) + \left( R(y,z,x,w) - R^{\prime}(y,z,x,w) \right) \\ \ + \left( R(z,x,y,w) - R^{\prime}(z,x,y,w) \right) = 0 $$
この時、括弧で囲まれた3項は全て$(3)$によって同じである。したがって、
$$ 3\left( R(x,y,z,w) - R^{\prime}(x,y,z,w) \right) = 0 \\[1em] \implies R(x,y,z,w) = R^{\prime}(x,y,z,w) $$
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Manfredo P. Do Carmo, Riemannian Geometry (Eng Edition, 1992), p94-95 ↩︎