第2正規形の性質
定義
第2基本形式とは、接空間 $T_{p}M$の上の双線形形式として定義されるもので、次のように定義される。二つの接ベクトル$\mathbf{X}=\sum X^{i}\mathbf{x}_{i}$と$\mathbf{Y} = \sum Y^{j}\mathbf{x}_{j}$に対して、
$$ II ( \mathbf{X}, \mathbf{Y}) = \sum _{i,j} L_{ij} X^{i} Y^{j} $$
この時、係数$L_{ij}$は次の通りである。
$$ L_{ij} = \left\langle \mathbf{x}_{ij}, \mathbf{n} \right\rangle $$
性質1
$II$は対称的である。
$\mathbf{T}$を単位速度曲線 $\boldsymbol{\gamma}$の接ベクトル場とすると、$\kappa_{n} = II (\mathbf{T}, \mathbf{T})$が成立する。$\kappa_{n}$は法曲率である。
$\boldsymbol{\alpha}, \boldsymbol{\beta}$を$\boldsymbol{\alpha}(0) = \boldsymbol{\beta}(0)$が成立する正則曲線としよう。もし$\lambda \ne 0$に対して二つの曲線の速度ベクトルが$\boldsymbol{\alpha}^{\prime}(0) = \lambda \boldsymbol{\beta}^{\prime}(0)$を満たすなら、$t=0$の時、二つの曲線の法曲率$\kappa_{n}$は同じである。
説明
$t=0$の時に記述されたけれども、自然に任意の$t$に一般化される。
タンジェントは速度ベクトルの大きさを$1$とするもので、速度ベクトルが定数倍であることは、二つの曲線のタンジェントに対して$T_{\boldsymbol{\alpha}} = \pm T_{\boldsymbol{\beta}}$が成立するということと同じである。
同じ方向のタンジェントを持つ曲線の法曲率が同じであるという意味で、法曲率は曲線に依存せず、タンジェントによってのみ決定されることがわかる。
証明
性質1
$II$が対称であるとは、$II( \mathbf{X}, \mathbf{Y} ) = II( \mathbf{Y}, \mathbf{X} )$または$L_{ij} = L_{ji}$が成立することを意味する。座標変換写像$\mathbf{x}$が十分に滑らかであると仮定すると、$\mathbf{x}_{ij} = \mathbf{x}_{ji}$が成立する。したがって、
$$ L_{ij} = \left\langle \mathbf{x}_{ij}, \mathbf{n} \right\rangle = \left\langle \mathbf{x}_{ji}, \mathbf{n} \right\rangle = L_{ji} $$
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性質2
$\boldsymbol{\gamma}(s) = \mathbf{x}\left( \gamma^{1}(s), \gamma^{2}(s) \right)$を単位速度曲線としよう。すると、接ベクトルは連鎖律により、次のようになる。
$$ \begin{align*} \mathbf{T} &= \dfrac{d \boldsymbol{\gamma}}{d s} = \dfrac{d }{d s}\mathbf{x}\left( \gamma^{1}(s), \gamma^{2}(s) \right) \\ &= \dfrac{\partial \mathbf{x}}{\partial \gamma^{1}}\dfrac{\partial \gamma^{1}}{\partial s} + \dfrac{\partial \mathbf{x}}{\partial \gamma^{2}}\dfrac{\partial \gamma^{2}}{\partial s} \\ &= (\gamma^{1})^{\prime}\mathbf{x}_{1} + (\gamma^{2})^{\prime}\mathbf{x}_{2} \\ &= T^{1}\mathbf{x}_{1} + T^{2}\mathbf{x}_{2} \end{align*} $$
$$ \implies T^{i} = (\gamma^{i})^{\prime} $$
任意の単位速度曲線 $\boldsymbol{\gamma}(s) = \mathbf{x}\left( \gamma^{1}(s), \gamma^{2}(s) \right)$に対して、
$$ \kappa_{n} = \sum \limits_{i=1}^{2} \sum \limits_{j=1}^{2} L_{ij} (\gamma^{i})^{\prime} (\gamma^{j})^{\prime} $$
したがって、第2基本形式の定義と上記の補助定理により、次が成立する。
$$ II(\mathbf{T}, \mathbf{T}) = \sum\limits_{i, j} L_{ij}T^{i}T^{j} = \sum \limits_{i, j} L_{ij} (\gamma^{i})^{\prime} (\gamma^{j})^{\prime} = \kappa_{n} $$
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性質3
$\boldsymbol{\alpha}$と$\boldsymbol{\beta}$の$t=0$における接ベクトルをそれぞれ$T_{\boldsymbol{\alpha}}, T_{\boldsymbol{\beta}}$としよう。すると$\boldsymbol{\alpha} ^{\prime}(0) = \lambda \boldsymbol{\beta} ^{\prime}(0)$と仮定したので、次が成立する。
$$ T_{\boldsymbol{\alpha}} = \pm T_{\boldsymbol{\beta}} $$
それゆえ、次が成立する。
$$ II ( T_{\boldsymbol{\alpha}}, T_{\boldsymbol{\alpha}}) = II ( \pm T_{\boldsymbol{\beta}}, \pm T_{\boldsymbol{\beta}}) = II ( T_{\boldsymbol{\beta}}, T_{\boldsymbol{\beta}}) $$
したがって、性質2により$t=0$の時、二つの曲線の法曲率が同じである。
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Richard S. Millman and George D. Parker, Elements of Differential Geometry (1977), p123 ↩︎