曲面に沿った平行ベクトル場の定義
曲線に沿ったベクトル場[^1]
定義
曲面 $M$と曲線 $\alpha : \left[ a, b \right] \to M$が与えられたとする。それぞれの$t \in \left[ a,b \right]$を点$\alpha (t)$上で曲面$M$に対する接ベクトルに対応させる関数$\mathbf{X}$を曲線$\alpha$に沿ったベクトル場vector field along a curve$\alpha$という。
$$ \mathbf{X} : \left[ a, b \right] \to \mathbb{R}^{3} \\ \mathbf{X}(t) \in T_{\alpha (t)}M $$
説明
定義で言う接ベクトルは、曲線$\alpha$の接ベクトルではなく、$T_{\alpha (t)}M$の要素である点$\alpha (t)$での接ベクトルであることに注意しよう。曲面上の各点$\alpha (t)$での接ベクトルは一意ではないため、曲線$\alpha$に沿ったベクトル場も一意ではない。接平面に無限のベクトルがあるため$\mathbf{X}$も無限に存在する。
簡単な例として$M$上の曲線$\alpha (t)$が与えられた時、$\alpha (t)$の接ベクトル場である$\mathbf{T}(t)$は$\alpha$に沿ったベクトル場となる。$\mathbf{S} = \mathbf{n} \times \mathbf{T}$もまた$\alpha$ベクトル場である。
$\mathbf{S}$と$\mathbf{T}$は接空間の基底となるため、全ての$\alpha$ベクトル場$\mathbf{X}$は次のような線形結合で表される。
$$ \mathbf{X}(t) = A(t)\mathbf{T}(t) + B(t)\mathbf{S}(t)\quad \text{for some } A,B:[a,b]\to \mathbb{R} $$
微分可能なベクトル場
定義
$\alpha (t)$に沿ったベクトル場$\mathbf{X}(t)$が微分可能であるdifferentiableとは、関数$\mathbf{X} : \left[ a, b \right] \to \mathbb{R}^{3}$が微分可能であることを意味する。
説明
正確には'$\mathbf{X}$が微分可能である'と言うべきだが、'$\mathbf{X}(t)$が微分可能である'とも便宜上言う。
平行なベクトル場
定義
微分可能な$\alpha$ベクトル場$\mathbf{X}(t)$が与えられたとする。$\dfrac{d \mathbf{X}}{dt}$が曲面$M$と垂直なら、$\mathbf{X}(t)$が$\alpha (t)$に沿って平行であるparallel along$\alpha (t)$と定義する。
説明
上で説明したように、$\alpha$ベクトル場は本当に任意に選ぶことができるが、「微分可能な$\alpha$ベクトル場」という条件は、「平行な線」という概念を話すために制限を設けるものである。
曲面$M$と垂直であるということは、$\dfrac{d \mathbf{X}}{dt}$が接方向の成分は持たず、法線方向の成分のみを持つということと同じである。定義を見ただけではなぜこのようなベクトル場を平行であるというのか理解しにくいかもしれないので、次の例を見よう。
例
2次元平面で
$xy-$平面上の曲線$\boldsymbol{\gamma}(t) = \left( a(t), b(t), 0 \right)$を考えよう。そして$\mathbf{X}(t) = \left( A(t), B(t), 0 \right)$を$\boldsymbol{\gamma}$に沿ったベクトル場としよう。そうすると、
$$ \dfrac{d \mathbf{X}}{dt} = \left( \dfrac{d A}{dt}, \dfrac{d B}{dt}, 0 \right) $$
このベクトルが$xy-$平面と垂直であるためには、任意の全てのベクトル$(x,y,0)$との内積が$0$である必要があるので、次を得る。
$$ \dfrac{d A}{dt} = 0 = \dfrac{d B}{dt} $$
したがって$A(t), B(t)$は定数である。これを図で表すと次のようになり、私たちが直感的に考える「曲線$\boldsymbol{\gamma}$に沿って平行なベクトルたち」によく合っている。
球面上で
$M$を単位球面としよう。${\color{6699CC}\boldsymbol{\gamma}(t)}$を赤道線としよう。そして$\boldsymbol{\gamma}$に沿ったベクトル場${\color{295F2E}\mathbf{X}_{\boldsymbol{\gamma}}(t) = (0, 0, 1)}$を考えてみよう。そうすると$\dfrac{d \mathbf{X}_{\boldsymbol{\gamma}}}{dt} = (0,0,0)$であるため、常に▷