微分可能多様体上の接線ベクトル
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微分多様体 M の各点で接ベクトルを定義しようとしている。微分可能な曲線 α:(−ϵ,ϵ)→Mが与えられたとする。これから、微分幾何学でのように、αのt=0での微分係数dtdα(0)を接ベクトルと定義したいが、αの値域がMであるため(距離空間とは限らないため)、αの導関数を言及することができない。このため、多様体上の接ベクトルを関数、つまりオペレーターとして定義することになる。微分幾何学を学んだなら、ベクトルをオペレーターとして扱うことに慣れているはずだ。次の説明を見てみよう。
方向微分
X∈TpMを曲面Mの点pでの接ベクトル、α(t)をM上の曲線とする。この時、α:(−ϵ,ϵ)→Mであり、α(0)=pを満たす。つまり、X=dtdα(0)である。ここで関数fを曲面M上の点p∈Mのある近傍で定義された微分可能な関数とする。するとX方向へのfの方向微分directional derivativeXfを次のように定義する。
X:D→R,where D is set of all differentiable functions near p
Xf:=dtd(f∘α)(0)
上の定義から見て、固定された接ベクトルXがあれば、fが与えられるたびにXfが決定される。したがって、接ベクトルはそれ自体がオペレーターとして扱われる。Xfのような記法も、オペレーターの観点から見るために使われる。微分多様体上の接ベクトルも同様に、M上で微分可能な関数fが与えられるたびに、fとある曲線αとの合成を通じて実数空間をマッピングする関数として定義される。
定義
Mをn次元の微分多様体とする。微分可能な関数 α:(−ϵ,ϵ)→Mを**Mで微分可能な曲線**とする。α(0)=p∈Mと仮定する。そして集合Dを次のようにpで微分可能な関数の集合として定義する。
D:={f:M→R∣functions on Mthat are differentiable at p}
すると、α(0)=pでの接ベクトルα′(0):D→Rを次のような関数として定義する。
α′(0)f=dtd(f∘α)(0),f∈D
点p∈Mでのすべての接ベクトルの集合を接空間tangent spaceと呼び、TpMのように表す。
説明
f:M→Rとα:(−ϵ,ϵ)→Mはそれぞれ定義域と値域が距離空間であることが保証されていないため、古典的な意味で微分できないが、これらの合成であるf∘α:(−ϵ,ϵ)→Rは微分可能である。
ある微分可能な曲線αが与えられるたびに接ベクトルが決定されるので、微分可能な曲線が存在する限り接ベクトルが存在すると考えることができる。また、二つの接ベクトルX,Yが異なる二つの曲線α、βによって決定されたとしても、すべてのf∈Dに対してXf=Yfが成立する場合、XとYを同じ接ベクトルとして扱う。
接ベクトルの集合TpMを接空間と呼ぶ理由は、これが実際にn次元のベクトル空間であるからである。
以下に紹介する定理から、点pでの接ベクトルの関数値α′(0)fは、任意の座標系x:U→Mを一つ選択することでこれに対して表すことができ、この値はxの選択に依存しないことがわかる。
例
TpR3を考えよう。ある微分可能な曲線α:(−ϵ,ϵ)→R3が決定されると、3次元ベクトルα′(0)=v=(v1,v2,v3)∈R3が決定される。定義により、接ベクトルは次のようになる。f:R3→Rに対して、
Xf=dtd(f∘α)(0)=i∑∂xi∂fdtdαi(0)=i∑vi∂xi∂f
これはユークリッド空間での方向微分と同じである。
v[f]=∇vf=v⋅∇f=i∑vi∂vi∂f
方向微分はベクトルをオペレーターとして扱ったものであり、実質的にベクトルと同じである。したがって、XはR3の要素として扱うことができ、次が成立する。
TpR3≊R3
定理
α(0)=pである微分可能な曲線と点pでの座標系x:U→Mが与えられたとする。(u1,…,un)はRnの座標であり、
(x1(p),…,xn(p))=x−1(p)
とする。すると、次の式が成立する。
α′(0)f== i=1∑nxi′(p)∂ui∂(f∘x)p i=1∑nxi′(α(0))∂xi∂ft=0
この時、単純にxi′(0)=xi′(α(0))と表記する。したがって、α′(0)は次のような微分オペレーターである。
α′(0)=i=1∑nxi′(0)∂xi∂t=0
基底{∂xi∂t=0}に対して座標ベクトルで表記すると、次のようになる。
α′(0)=x1′(0)⋮xn′(0)
証明
p=x(0)となるようなMの座標系 x:U⊂Rn→Mを一つ選ぼう。接ベクトルを座標系で表現できるようにf∘α=f∘x∘x−1∘αのように考える。すると、x∘x−1=Iは恒等関数であるため、どの座標系を選んでも関係ないことがわかる。これから、f∘xとx−1∘αをそれぞれ全体として一つの関数とみなし、f∘αをこれら二つの合成関数と考える。
f∘α=(f∘x)∘(x−1∘α)
まずf∘xを考える。f∘x:Rn→Rであるため、次のように表現され、古典的な意味で微分が可能である。
f∘x=f∘x(u)=f∘x(u1,u2,…,un),u=(u1,…,un)∈Rn
x−1∘αもまた、x−1∘α:R→Rnであるため、次のように表現され、古典的な意味で微分が可能である。
x−1∘α(t)== (x1(α(t)),x2(α(t)),…,xn(α(t))) (x1(t),x2(t),…,xn(t))
この時、xiはxi:M→Rである関数であり、xi(t)はxi(α(t))を簡単に表記したものであることに注意する。
このように考えると、f∘αは二つの関数の合成であり、R⟶x−1∘αRn⟶f∘xRのようにマッピングされる。したがって、連鎖律により、次が成立する。
dtd(f∘α)=dtd((f∘x)∘(x−1∘α))=i=1∑n∂ui∂(f∘x)dtd(x−1∘α)i=i=1∑n∂ui∂(f∘x)dtdxi
したがって、次を得る。
α′(0)f:==== dtd(f∘α)(0) i=1∑n∂ui∂(f∘x)t=0dtdxi(0) i=1∑n∂ui∂(f∘x)t=0xi′(0) i=1∑nxi′(0)∂ui∂(f∘x)t=0
ここで、∂xi∂t=0を次のようなオペレーターとして定義しよう。
∂xi∂t=0f:=∂ui∂(f∘x)t=0
∂xi∂fの意味をまとめると、次のようになる。
fは定義域がMであるため微分できない。したがって、座標系x:Rn→Mとの合成を通じてf∘xを考える。これはRnをRにマッピングするため、古典的な意味で微分が可能である。したがって、∂xi∂fはfをxと合成した後、これをユークリッド空間Rnのi番目の変数uiに対して微分したものとして定義する。
最終的に次を得る。
α′(0)f== i=1∑nxi′(0)∂ui∂(f∘x)t=0 i=1∑nxi′(0)∂xi∂t=0f= i=1∑nxi′(0)∂xi∂ft=0
⟹α′(0)=i=1∑nxi′(0)∂xi∂t=0
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関連項目