気体の流束
定義1
物理学で、フラックスとは、単位時間あたりに単位面積を通過(衝突)する粒子の数(またはエネルギーや運動量などの物理量)を意味する。フラックスは通常、大文字のファイ(Φ)$\Phi$で示される。
$$ \Phi = \dfrac{\text{physical quantity}}{\text{area} \times \text{time}} $$
説明
定義によると、気体のフラックスとは、単位時間あたりに単位面積を通過する気体分子の数を意味し、熱フラックスとは、単位時間あたりに単位面積を通過する熱エネルギーを意味する。
角度$\theta$で単位時間あたりに単位面積を打つ(通過する)速度が$v$の気体分子の数は、理想気体の法則を導出する過程で次のように与えられる。
$$ \left( n f(v) \right) \left( \dfrac{1}{2} \sin\theta\right) \left( v \cos \theta \right) $$
したがって、これを$r \in [0,\infty)$、$\theta=[0,\pi / 2]$について積分すると、単位時間あたりに単位面積を打つ分子の数になる。
$$ \begin{align*} \Phi &= \int_{0}^{\infty} \int_{0}^{\pi/2} \left( n f(v) \right) \left( \dfrac{1}{2} \sin\theta\right) \left( v \cos \theta \right) dv d\theta \\ &= \dfrac{n}{2} \int_{0}^{\infty} f(v) v dv \int_{0}^{\pi/2} \sin \theta \cos \theta d\theta \end{align*} $$
前述の$v$に対する積分は速度の期待値である。
$$ \int_{0}^{\infty} f(v) v dv = \left\langle v \right\rangle $$
$\theta$に対する積分値は$\dfrac{1}{2}$であるので、気体のフラックスは、以下のように単位時間あたりに単位面積を打つ分子の数として表される。
$$ \Phi = \dfrac{1}{4}n\left\langle v \right\rangle $$
この値を実際に計算してみよう。速度の期待値は、以下のようである。
$$ \left\langle v \right\rangle = \sqrt{\dfrac{8 k_{B} T}{\pi m }} $$
また、理想気体の法則により$p = n k_{B}T$であるため、
$$ \Phi = \dfrac{1}{4} \dfrac{p}{k_{B}T} \sqrt{\dfrac{8 k_{B} T}{\pi m }} = \dfrac{p}{\sqrt{2 \pi m k_{B} T}} $$
上記の式から、気体のフラックスは質量の平方根の逆数に比例することがわかる。これは、グラハムが実験的に明らかにしたグラハムの法則と同じ結果である。
Stephen J. Blundell and Katherine M. Blundell, 熱物理学の概念(Concepts in Thermal Physics, 李在雨訳)(第2版, 2014)、p83-84 ↩︎