交換子の性質
📂量子力学交換子の性質
定義
二つの演算子A,Bに対して、AB−BAはA,Bの交換子と定義され、次のように表記される。
[A,B]=AB−BA
性質
[A,A][A,B][A+B,C][AB,C][A,BC]=0=−[B,A]=[A,C]+[B,C]=A[B,C]+[A,C]B=B[A,C]+[A,B]C
説明
量子力学を記述する主な方法が行列だ。ところが、行列は乗算に対して交換法則が成り立たない。だから、A, Bという演算子(行列)があるとき、以下のように展開すると一般的には正しくない。
(A+B)2=A2+2AB+B2
正しく展開すると次のとおり。
(A+B)2=A2+AB+BA+B2
'演算子=行列'と覚えておくことがミスを減らす道だ。上記の性質は交換子を計算するときに便利に使われる。
証明
(1)
[A,A]=AA−AA=0
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(2)
[A,B]=AB−BA=−(BA−AB)=−[B,A]
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(3)
[A+B,C]=(A+B)C−C(A+B)=AC+BC−CA−CB=(AC−CA)+(BC−CB)=[A,C]+[B,C]
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(4)
[AB,C]=(AB)C−C(AB)=ABC−CAB=(ABC−CAB)+(ACB−ACB)=(ABC−ACB)+(ACB−CAB)=A(BC−CB)+(AC−CA)B=A[B,C]+[A,C]B
(5)
[A,BC]=A(BC)−(BC)A=ABC−BCA=(ABC−BCA)+(BAC−BAC)=(BAC−BCA)+(ABC−BAC)=B[A,C]+[A,B]C
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