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無限ポテンシャル井戸における波動関数固有関数とエネルギー固有値の求め方 📂量子力学

無限ポテンシャル井戸における波動関数固有関数とエネルギー固有値の求め方

まとめ

ポテンシャルが無限の長方形の形をしている場合、波動関数のエネルギー(固有値)は

En=n2π222ma2(n=0,1,2,) E_{n}=\frac{n^{2}\pi^{2}\hbar^{2}}{2ma^{2}} \quad (n = 0, 1, 2, \dots)

と同じで、各エネルギーに対応する波動関数(固有状態)は以下の通りだ。

ψn(x)=2asinnπax \psi_{n}{(x)} = \sqrt{\frac{2}{a}}\sin \frac{n\pi}{a}x

説明

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このような形のポテンシャルを無限ポテンシャル井戸infinite potential wellと言うんだ。箱の中の粒子モデルparticle in a box modelとも呼ばれる。粒子が特定の区間を絶対に逸脱できない状況を描写するモデルなんだ。非常に単純なモデルだけど、古典力学の結果とは大きく異なる様相を見せる。古典力学では粒子が見つかる位置が区間内で均一なのに対し、量子力学では位置によって粒子が見つかる確率に差がある。

証明

ポテンシャルUUが以下のように与えられている状況を仮定しよう。

22md2ψ(x)dx2+Uψ(x)=Eψ(x),  U={,<x<00,0<x<a,a<x< -\frac{\hbar ^{2}}{2m}\frac{d^{2} \psi{(x)}}{dx^{2}}+U\psi{(x)}=E\psi{(x)},\ \ U=\begin{cases} \infty, & -\infty < x <0 \\ 0, & 0<x<a \\ \infty, & a<x<\infty \end{cases}

E<0E \lt 0

ポテンシャルは常に00以上なので、エネルギーが負の時は波動関数が存在しない

E>0E \gt 0

0<x<a0 \lt x \lt a

区間[0,a][0, a]でポテンシャルはU=0U = 0であり、シュレディンガー方程式は以下の通りだ。

d2ψdx2+2m2Eψ=0 \frac{d^{2} \psi}{dx^{2}} + \frac{2m}{\hbar^{2}}E\psi=0

EEが正なので、2m2E\dfrac{2m}{\hbar^{2}}Eも正である。従ってこれをk2k^{2}としよう。そうするとシュレディンガー方程式は以下の通りだ。

d2ψdx2+k2ψ=0 \frac{d^{2} \psi}{dx^{2}} + k^{2}\psi = 0

この微分方程式の解は以下の通りだ。

ψ=Asinkx+Bcoskx \psi = A\sin kx + B\cos kx

ここで境界条件(boundary condition)( \mathrm{boundary \ condition})を適用すると、ψ(0)=ψ(a)=0\psi{(0)}=\psi{(a)}=0 sin \sin関数が境界条件を満たすが、cos\cos関数が境界条件を満たさない。従って、ψ(x)=Asinkx\psi{(x)}=A \sin kx境界条件でkkを求めてみると、ψ(a)=Asinka=0\psi (a)=A \sin ka =0であり、sin関数が00になる整数倍でので、ka=nπ    k=nπa\displaystyle ka=n\pi \implies k=\frac{n\pi}{a} ψ(x)=Asinnπax \psi{(x)}=A \sin \frac{n\pi}{a}x。最後に規格化を通じてAAを求めてみよう。粒子はどこかに存在しなければならないので全区間で確率は11\displaystyle \begin{align*} 1 &= \int_{0}^a |A|^{2} \sin^{2} \frac{n\pi}{a}x dx \\ &= |A|^{2} \int_{0}^a \frac{1}{2}(1-\cos \frac{2n\pi}{a}x)dx \\ &= |A|^{2}\frac{1}{2} \left[x-\frac{a}{2n\pi}\sin \frac{2n\pi}{a}x\right]_{0}^a \\ &= |A|^{2} \frac{a}{2} \end{align*}     A=2a \implies A=\sqrt{\frac{2}{a}}。従って無限ポテンシャル井戸での波動関数(固有関数)はψ(x)=2asinnπax\displaystyle \psi{(x)}=\sqrt{\frac{2}{a}}\sin \frac{n\pi}{a}x。この時、波動関数の中でエネルギー準位(nn)が最も低い状態を基底状態Ground state\mathrm{Ground\ state}と言う。基底状態ではない状態を励起状態Excited state\mathrm{Excited\ state}。つまり無限ポテンシャル井戸での基底状態はψ1(x)=2asin(πax)\psi_{1}(x)=\sqrt{\dfrac{2}{a}}\sin\left( \dfrac{\pi}{a}x \right)だ。最初の励起状態はψ2(x)=2asin(2πax)\psi_2(x)=\sqrt{\dfrac{2}{a}}\sin\left( \dfrac{2\pi}{a}x \right)、二番目の励起状態はψ3(x)=2asin(3πax)\psi_{3}(x)=\sqrt{\dfrac{2}{a}}\sin\left( \dfrac{3\pi}{a}x \right)。そして固有値(エネルギー)を求めてみよう。2m2E=k2, k=nπa\displaystyle \frac{2m}{\hbar^{2}}E=k^{2},\ k=\frac{n\pi}{a}なのでE=2k22m=n2π222ma2\displaystyle E=\frac{\hbar^{2}k^{2}}{2m}=\frac{n^{2}\pi^{2}\hbar^{2}}{2ma^{2}}。エネルギーEEが整数nnによって量子化されていることがわかる。つまり、任意のエネルギーを持つことができるわけではなく、nnに対して定められたエネルギーのみを持つことができる。また、n2n^{2}に比例することがわかる。下添字nnを使って次のように表記する。En=n2π222ma2\displaystyle E_{n}=\frac{n^{2}\pi^{2}\hbar^{2}}{2ma^{2}}