複素関数の極限
定義 1
関数 $f : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$ が開集合 $A \subset \mathbb{C}$ で定義された複素関数 $f : A \to \mathbb{C}$ であり、$\alpha \in \overline{A}$ とする。$f(z)$ が $z \to \alpha$ の時に 極限limit $l$ に収束するとは、あらゆる $\varepsilon > 0$ に対して $$ 0 < \left| z - \alpha \right| < \delta \implies \left| f(z) - l \right| < \varepsilon $$ を満たす $\delta > 0$ が存在することであり、以下のように表される。 $$ \lim_{z \to \alpha} f(z) = l $$
性質
$\lim_{z \to \alpha} f(z)$ と $\lim_{z \to \alpha} g(z)$ が存在するとする。
- 一意性: $\displaystyle \lim_{z \to \alpha} f(z)$ が存在するならば、それは唯一である。
- 共役: $$\lim_{z \to \alpha} \overline{z} = \overline{\alpha}$$
- 定数倍: あらゆる $k \in \mathbb{C}$ に対して $$ \lim_{z \to \alpha} k f(z) = k \lim_{z \to \alpha} f(z) $$
- 加法: $$\lim_{z \to \alpha} \left[ f(z) + g(z) \right] = \lim_{z \to \alpha} f(z) + \lim_{z \to \alpha} g(z)$$
- 乗法: $$\lim_{z \to \alpha} f(z) g(z) = \lim_{z \to \alpha} f(z) \lim_{z \to \alpha} g(z)$$
- 除法: $\displaystyle \lim_{z \to \alpha} g(z) \ne 0$ の時のみ、 $$\lim_{z \to \alpha} {{ f(x) } \over { g(x) }} = {{ \lim_{z \to \alpha} f(z) } \over { \lim_{z \to \alpha} g(z) }}$$
説明
定義で $\alpha$ は特に $f$ の定義域に属する必要はなかったし、$l = f(\alpha)$ と言ったこともないことに注意。
実数値関数real Valued functionと複素数関数complex Valued functionの違いは方向性にある。$\mathbb{R}$ から $x \to a$ へとは $a$ の両側から近づく感じだが、$\mathbb{C}$ から $z \to \alpha$ への接近は、複素平面 上で全方位から近づく感じである。
Osborne (1999). Complex variables and their applications: p37. ↩︎