二項分布から近似される正規分布の分散安定化
例示 1
$Y = Y_{n}$が二項分布$\text{Bin} (n,p)$に従うとすれば、 $$ \arcsin \sqrt{ {{ Y } \over { n }} } \overset{D}{\to} N \left( \arcsin \sqrt{p} , n/4 \right) $$
説明
二項分布$\text{Bin} (n, p )$が$n \to \infty$の時、正規分布$N \left( np, np(1-p) \right)$に収束するため、正規分布そのものに驚くべきものはない。しかし、このような変換をすることで、パラメーター$p$に関わらず一定の極限分布を得ることができる。これは、数式上のトリックであり、実際にどこで使われるかというよりも、大学1年生以降見ないと思っていたアークサインの微分法が使われる点が面白い。
$Y/n$に$u$を適用した$u ( Y/n )$の分散が$p$に自由だと仮定しよう。十分に大きな$n$に対して、$Y/n \approx p$なので、 テイラー展開すると、 $$ u \left( {{ Y } \over { n }} \right) \approx u (p) + \left( {{ Y } \over { n }} - p \right) u ' (p) $$
両辺に期待値を取ると、$u (Y/n)$の平均は$u (p)$となり、分散はその性質によって$\operatorname{Var} (aX + b) = a^{2} \operatorname{Var} (X)$となる、 $$ \left[ u ' (p) \right]^{2} {{ p ( 1 - p ) } \over { n }} $$
この分散が$p$に自由になるには、分子にある$p ( 1 - p)$と相殺するように$u ' (p)$の二乗を設定すればよい。したがって、ある定数$c$に対して $$ u ‘(p) = {{ du(p) } \over { dp }} = {{ c } \over { \sqrt{ p ( 1 - p )} }} $$ と設定すると、$u(p)$の分散から$p$が消える。この微分方程式の解は、アークサイン関数の微分法で直接求めることができる。
逆三角関数の微分法: $$ \left( \arcsin x \right)' = {{ 1 } \over { \sqrt{1-x^{2}} }} $$
微分方程式の解は次の通りであり、分母が少し違って見えるかもしれないが、検算してみると$\sqrt{p}$の微分のために正確に一致する。 $$ u (p) = 2c \arcsin \sqrt{p} $$ $c$が何であれ、同じように微分方程式を立て、解くことができるため、何であっても関係ないが、見た目がきれいになるように$c = 1/2$とすると、例示で紹介した形になる。
Hogg et al. (2013). Introduction to Mathematical Statistcs(7th Edition): p318. ↩︎