運動量と位置の交換子
公式
$$ \begin{align} [p, x] &= -\i \hbar \\ [x, p] &= \i \hbar \end{align} $$
この式を標準交換関係式canonical commutation relationと言う。位置の二乗と運動量の交換子は以下の通りだ。
$$ \begin{align} [x^{2}, p] &= 2 \i \hbar x \\ [p, x^{2}] &= -2 \i \hbar x \end{align} $$
説明
運動量演算子 $p = \i\hbar \dfrac{d}{dx}$が微分演算子なので、それぞれの違う座標についてはすべて交換可能だ。
$$ [x,p_{y}]=[x,p_{z}]=[y,p_{x}]=[y,p_{z}]=[z,p_{x}]=[z,p_{y}] = 0 $$
これを次のように整理できる。
$$ [x_{k}, p_{x_{\ell}}] = \i \hbar \delta_{k\ell} \\[1em] [p_{x_{k}}, x_{\ell}] = - \i \hbar \delta_{k\ell} $$
ここで、$\delta_{k\ell}$はクロネッカーのデルタだ。
証明
$D_{x}$を微分演算子とする。
$$ D_{x} := \frac{d}{dx} $$
そして、導関数 $\dfrac{df}{dx}$を簡単に次のように表記する。
$$ f_{x} = \dfrac{df}{dx} = D_{x}f $$
$(1), (2)$
運動量演算子が$p=-\i \hbar \dfrac{d}{dx} = -\i \hbar D_{x}$なので、次を得る。
$$ \begin{align*} [p, x] \psi &= px\psi - xp\psi \\ &= -\i \hbar D_{x} (x\psi) + \i \hbar x D_{x}\psi \\ &= -\i \hbar\psi - \i \hbar x \psi_{x} + \i \hbar x\psi_{x} \\ &= -\i \hbar \psi \end{align*} $$
したがって
$$ [p,x] = -\i\hbar= \dfrac{\hbar}{\i} $$
また、$[x,p] = -[p, x]$なので
$$ [x,p] = -[p,x] = \i \hbar $$
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$(3), (4)$
$$ \begin{align*} [x^{2},p]\psi &= x^{2}p\psi-px^{2}\psi \\ &= x^{2}(-\i\hbar D_{x}\psi) + \i\hbar D_{x}(x^{2}\psi) \\ &= -\i\hbar x^{2}\psi_{x} + \i\hbar2x\psi + \i\hbar x^{2}\psi_{x} \\ &= 2\i\hbar x \psi \end{align*} $$
したがって
$$ [x^{2},p] = 2 \i\hbar x $$
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交換子の性質 (4)によって、
$$ [ AB, C ] = A [ B, C ] + [ A, C ] B $$
交換子の性質によって、次のように計算される。
$$ \begin{align*} [x^{2}, p] &= x[x,p] + [x,p]x \\ &= x \i \hbar +\i \hbar x \\ &= 2 \i \hbar x \end{align*} $$
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