量子力学におけるはしご演算子とは何か?
定義
任意の演算子$N$に対して、$n$をその固有値、$\ket{n}$を対応する固有関数とする。
$$ N \ket{n} = n \ket{n} $$
次の条件を満たす演算子$A$を、$N$に対応するハシゴ演算子ladder operatorと呼ぶ。
$$ \left[ N, A \right] = cA \tag{1} $$
ここで、$c$は定数であり、$[N, A]$は交換子である。
説明
$A$がハシゴ演算子と呼ばれる理由は、$A$が$\ket{n}$の固有値を上げたり下げたりできるためだ。$A$が$\ket{n}$の固有値を上げる場合には上昇演算子raising operator、$\ket{n}$の固有値を下げる場合には下降演算子lowering operatorと呼ばれる。
$c \gt 0$の場合を考える。$(1)$を解くと、
$$ NA - AN = cA \implies NA = AN + cA $$
$A\ket{n}$が$\ket{n}$よりも$c$だけ大きな固有値を持つ、$N$の固有関数であることを示すことができる。
$$ \begin{align*} N(A\ket{n}) &= (AN + cA)\ket{n} \\ &= AN\ket{n} + cA\ket{n} \\ &= nA\ket{n} + cA\ket{n} \\ &= (n + c)A\ket{n} \end{align*} $$
つまり、$A\ket{n} = \ket{n+c}$だ。この場合、上昇演算子を通常は$A_{+}$で表記する。もし$N$がエルミート演算子であるなら、$A{+}$の随伴演算子は逆に、$\ket{n}$の固有値を$c$だけ下げる下降演算子であり、これを$A_{-} = A^{\ast}$で表記する。$N$がエルミート演算子であれば$c$は実数であるので、
$$ \begin{align*} && NA - AN &= cA \\ \implies && (NA - AN)^{\dagger} &= (cA)^{\dagger} \\ \implies && A^{\dagger}N - NA^{\dagger} &= cA^{\dagger} \\ \implies && NA^{\dagger} - A^{\dagger}N &= -cA^{\dagger} \\ \implies && \left[ N, A^{\dagger} \right] &= -cA^{\dagger} \\ \end{align*} $$
従って、$A^{\dagger} = A_{-}$であり、$\ket{n}$の固有値を$c$だけ下げる下降演算子である。
- 角運動量のはしご演算子$L_{\pm}$