積分判定法
ビルドアップ1
$$ \sum\limits_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^{2}} = 1 + \dfrac{1}{2^{2}} + \dfrac{1}{3^{2}} + \dfrac{1}{4^{2}} + \cdots $$
このような級数が収束するか発散するかを知りたい状況だとしよう。そのために$\dfrac{1}{n^{2}} = f(n)$を満たす関数を考えよう。
$$ f(x) = \dfrac{1}{x^{2}} $$
関数$f(x)$のグラフとともに、区間の長さを$1$として右端点の関数値を高さに持つ長方形を描いてみよう。
すると、各長方形の面積の合計は求めたい級数の合計と同じになる。
$$ \sum\limits_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^{2}} = 1 + \dfrac{1}{4} + \dfrac{1}{9} + \dfrac{1}{16} + \cdots $$
しかし、図を見ればわかるように、$f(x)$が減少関数であり、$f(x) > 0$であるため、長方形は常に$f(x)$のグラフの下に描かれる。つまり、長方形の面積の合計は関数$f(x)$の積分より大きくなることはない。したがって、次の不等式を得られる。
$$ \sum\limits_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^{2}} = 1 + \dfrac{1}{4} + \dfrac{1}{9} + \dfrac{1}{16} + \cdots \le 1 + \int_{1}^{\infty} \dfrac{1}{x^{2}} dx $$
つまり、積分$\displaystyle \int_{1}^{\infty} \dfrac{1}{x^{2}}dx$が収束する場合、級数$\displaystyle \sum\limits_{n=1}^{\infty} \dfrac{1}{n^{2}}$も収束する。ここから次の定理が得られる。
定理
関数$f$が$x \in [1, \infty)$で連続であり、減少関数であり、$f(x) > 0$であるとしよう。そして$a_{n} = f(n)$としよう。すると、級数$\displaystyle \sum\limits_{n=1}^{\infty} a_{n}$が収束するのは積分$\displaystyle \int_{1}^{\infty} f(x)dx$が収束することと同値である。
$$ \int_{1}^{\infty} f(x) dx \text{ is convergent} \iff \sum\limits_{n=1}^{\infty} a_{n} \text{ is convergent} $$
$$ \int_{1}^{\infty} f(x) dx \text{ is divergent} \iff \sum\limits_{n=1}^{\infty} a_{n} \text{ is divergent} $$
一般化
有限の項の和は級数の収束性に影響を与えないので、自然数$k$について次のように一般化できる。
$$ \int_{k}^{\infty} f(x) dx \text{ is convergent} \iff \sum\limits_{n=k}^{\infty} a_{n} \text{ is convergent} $$
$$ \int_{k}^{\infty} f(x) dx \text{ is divergent} \iff \sum\limits_{n=k}^{\infty} a_{n} \text{ is divergent} $$
証明
次の二つの命題を証明すれば、対偶を取ることで定理が成立することがわかる。
- 積分が収束すれば級数が収束する。
- 積分が発散すれば級数が発散する。
積分が収束すれば、級数が収束する
数列$\left\{ a_{n} \right\}$と定理の条件を満たす関数$f(x)$が与えられたとしよう。ビルドアップのように、各区間で右端点の関数値を高さに持つ長方形を描くと以下のようになる。($f$が減少関数であるため成立する。)
つまり次の式が成立する。
$$ a_{2} + a_{3} + a_{4} + \cdots + a_{n} \le \int_{1}^{n} f(x) dx $$
もし積分$\displaystyle \int_{1}^{\infty} f(x) dx$が収束すれば、$f > 0$なので、
$$ \sum\limits_{i=2}^{n} a_{n} \le \int_{1}^{n} f(x) dx \lt \int_{1}^{n} f(x) dx \lt \infty $$
したがって、級数の部分和$s_{n}$について次の不等式が成立する。
$$ s_{n} = a_{1} + \sum\limits_{i=2}^{n} a_{n} \lt \int_{1}^{n} f(x) dx \lt \infty $$
これは$s_{n}$が有界であることを意味する。また$s_{n}$は増加数列であるため、単調数列定理によって$s_{n}$は収束する。つまり、級数$\displaystyle \sum\limits_{n=1}^{\infty} a_{n}$は収束する。
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積分が発散すれば、級数が発散する
今度は、左端点の関数値を高さに持つ長方形を描いてみよう。
したがって、次の式が成立する。
$$ \int_{1}^{n} f(x) dx \le a_{1} + a_{3} + a_{4} + \cdots + a_{n} + a_{n+1} = \sum\limits_{i=1}^{n-1}a_{i} $$
$$ \implies \int_{1}^{n} f(x) dx \lt \sum\limits_{i=1}^{n-1}a_{i} $$
両辺に$n \to \infty$の極限を取ると、
$$ \int_{1}^{\infty} f(x) dx \lt \sum\limits_{i=1}^{\infty}a_{i} $$
積分$\displaystyle \int_{1}^{\infty} f(x) dx$が発散するので、級数$\displaystyle \sum\limits_{i=1}^{\infty}a_{i}$が発散する。
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James Stewart, Daniel Clegg, and Saleem Watson, Calculus (early transcendentals, 9E), p751-758 ↩︎