内積空間で定義された内積に関連したノルムの性質
📂ヒルベルト空間内積空間で定義された内積に関連したノルムの性質
定理
内積空間 (X,⟨⋅,⋅⟩)が与えられたとしよう。すると自然に∥⋅∥:=⟨⋅,⋅⟩のようにノルムを定義できて、下の性質が成り立つ。
(a) コーシー-シュワルツ不等式: 任意のx,y∈Xに対して、
∣⟨x,y⟩∣≤∥x∥∥y∥
(b) 平行四辺形の法則: 任意のx,y∈Xに対して、
∥x+y∥2+∥x−y∥2=2(∥x∥2+∥y∥2)
(c) 複素ベクトル空間の偏極恒等式: 複素内積空間Xと任意のx,y∈Xに対して、
⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2+i(∥x+iy∥2−∥x−iy∥2))
(d) 実ベクトル空間の偏極恒等式: 実内積空間Xと任意のx,y∈Xに対して、
⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2)
(e) ノルム対内積: 任意のx∈Xに対して、
∥x∥=sup{∣⟨x,y⟩∣:y∈X,∥y∥=1}
証明
(a)
内積空間で、ノルムの定義によればコーシー-シュワルツ不等式は
∣⟨x,y⟩∣=≤⟨x,x⟩1/2⟨y,y⟩1/2 ∥x∥∥y∥
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(b)
∥x+y∥2+∥x−y∥2===== ⟨x+y,x+y⟩+⟨x−y,x−y⟩ ⟨x,x⟩+⟨x,y⟩+⟨y,x⟩+⟨y,y⟩+⟨x,x⟩−⟨x,y⟩−⟨y,x⟩+⟨y,y⟩ 2⟨x,x⟩+2⟨y,y⟩ 2(⟨x,x⟩+⟨y,y⟩) 2(∥x∥2+∥y∥2)
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(c)
証明 (b) を参照すれば、実数部の計算結果を得られる。
∥x+y∥2−∥x−y∥2= 2⟨x,y⟩+2⟨y,x⟩
虚数部を計算すると、以下のようになる。
∥x+iy∥2=== ⟨x+iy,x+iy⟩ ⟨x,x⟩+⟨x,iy⟩+⟨iy,x⟩+⟨iy,iy⟩ ⟨x,x⟩−i⟨x,y⟩+i⟨y,x⟩+⟨y,y⟩
そして
∥x−iy∥2=== ⟨x−iy,x−iy⟩ ⟨x,x⟩−⟨x,iy⟩−⟨iy,x⟩+⟨iy,iy⟩ ⟨x,x⟩+i⟨x,y⟩−i⟨y,x⟩+⟨y,y⟩
従って
∥x+iy∥2−∥x−iy∥2=−2i⟨x,y⟩+2i⟨y,x⟩
だから
==∥x+y∥2−∥x−y∥2+i(∥x+iy∥2−∥x−iy∥2) 2⟨x,y⟩+2⟨y,x⟩+2⟨x,y⟩−2⟨y,x⟩ 4⟨x,y⟩
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(d)
⟨x,y⟩∈Rならば ⟨x,y⟩=⟨y,x⟩=⟨y,x⟩であるので、
∥x+y∥2−∥x−y∥2== 2⟨x,y⟩+2⟨y,x⟩ 4⟨x,y⟩
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(e)
コーシー-シュワルツ不等式によれば、
∣⟨x,y⟩∣≤∥x∥∥y∥
すると次の式が成立する。
∥y∥=1sup∣⟨x,y⟩∣≤∥x∥
この時 y=∥x∥xを∥y∥=1として、
∣⟨x,y⟩∣==== ⟨x,∥x∥x⟩ ∥x∥1⟨x,x⟩ ∥x∥1∥x∥2 ∥x∥
が成立する。従って、
∥y∥=1sup∣⟨x,y⟩∣=∥x∥
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