ユークリッド空間における空でない完全集合は非可算である
定義
$(X,d)$を距離空間としよう。$p \in X$であり、かつ$E \subset X$とする。
$d(q,p)<r$を満たすすべての$q$を含む集合を点$p$の近傍と定義し、$N_{r}(p)$と表記する。この時、$r$を$N_{r}(p)$の半径と呼ぶ$N_{r}(p)$は、距離を省略してよい場合、$N_{p}$というふうに表記することもある。
$p$のすべての近傍が$q\ne p$であり、かつ$q\in E$である$q$を含んでいる場合、$p$を$E$の集積点と呼ぶ。
$E$のすべての集積点が$E$に含まれる場合、$E$は閉じていると言う。
$E$が閉じていると同時に$E$のすべての点が$E$の集積点である場合、$E$は完全であると言う。
定理
$P \subset \mathbb{R}^{k}$が空でない完全な集合だとしよう。すると、$P$は非可算である。
証明
背理法で証明する。
まず、$P$は集積点を持つので、無限集合である。ここで、$P$が可算であると仮定してみよう。すると、$P$の要素は
$$ \mathbf{x}_{1},\mathbf{x}_{2},\cdots,\mathbf{x}_{n},\cdots $$
と表現できる。次に、いくつかの$\mathbf{x}_{1}$の近傍$N_{1}$について考えてみよう。$\mathbf{x}_{1}$は$P$の集積点なので、$N_{1}$は少なくとも$\mathbf{x}_{1}$ではない$P$の点を一つは含む必要がある。その点を$\mathbf{x}_{2}$としよう。すると、半径を縮小して$\mathbf{x}_{1}$を含まない$\mathbf{x}_{2}$の近傍$N_{2}$を見つけることができる。十分に小さい近傍を選べば、$\mathbf{x}_{1}\notin \overline{N_{2}}$も満たせる。すると$\overline{N_{2}}\subset N_{1}$であり、かつ$\overline{N_{2}}\cap P \ne \varnothing$である。$\mathbf{x}_{2}$もまた$P$の集積点であるため、$N_{2}$は$\mathbf{x}_{2}$ではない$P$の点を含む必要がある。その点を$\mathbf{x}_{3}$としよう。
同じ方法で、$\mathbf{x}_{2}$を含まない$\mathbf{x}_{3}$の近傍$N_{3}$を見つけることができ、$\overline{N_{3}}\subset N_{2}$であり、かつ$\overline{N_{3}}\cap P \ne \varnothing$である。このように続けていくと、点$\mathbf{x}_{4}$、$\mathbf{x}_{5}$、$\cdots$およびそれぞれの点の近傍$N_{4},N_{5},\cdots$を選ぶことができる。すると、近傍の集合$\left\{ N_{n} \right\}$は以下の条件を満たすことになる。
(i) $\overline{N_{n+1}} \subset N_{n}$
(ii) $\mathbf{x}_{n} \notin \overline{N_{n+1}}$
(iii) $\overline{N_{n}} \cap P \ne \varnothing$
また、$\overline{N_{n}}$は閉じていて有界なのでコンパクトである。$P$も閉じているので、$K_{n}=\overline{N_{n}}\cap P$とすると、$K_{n}$はコンパクトである。
$\left\{ K_{n} \right\}$を空でないコンパクト集合の数列としよう。もし
$$ K_{n}\supset K_{n+1}\ (n=1,2,\cdots) $$
を満たせば、$\bigcap _{i=1}^{\infty} K_{n} \ne \varnothing$である
すると、$\left\{ K_{n} \right\}$は空でないコンパクト集合であり、$K_{n}\supset K_{n+1}$を満たすため、カントールの縮小区間定理により$\bigcap _{n=1}^{\infty} K_{n}\ne \varnothing$である。しかし、$(\mathrm{ii})$によって$\bigcap _{n=1}^{\infty}K_{n}=\varnothing$である。これは明らかに矛盾なので、仮定が間違っていたことがわかる。したがって、$P$は非可算である。
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結論
すべての閉区間$[a,b]$は非可算である。