logo

関数のサポートと連続関数空間のクラス 📂ヒルベルト空間

関数のサポートと連続関数空間のクラス

定義

関数空間 $\mathbb{C}^{\mathbb{R}}$ の関数 $f : \mathbb{R} \to \mathbb{C}$ を考えてみよう。

  • 関数 $f$ のサポートsupportは、関数値が $0$ ではない点の集合にクロージャを取ったクローズセットとして次のように定義される。 $$ \text{supp} f = \overline{\left\{ x \in \mathbb{R} : f(x) \ne 0 \right\}} $$

  • $\text{supp} f$が有界なら、$f$がコンパクトサポートを持つと言う。クロージャは閉集合であり、実数空間で閉じていて有界な集合はコンパクトだからである。

  • $U\Subset V$は$\overline{U} \subset V$であり$\overline{U}$がコンパクトであることを意味する。つまり、$\mathrm{supp}(f) \Subset U$は$f$が$U$でコンパクトサポートを持つことを意味する。$\subset \subset$として書くこともある。

  • 連続関数の集合はベクトル空間になり、これを連続関数空間と呼び、次のように表記する。

    $$ C(\mathbb{R}) := \left\{f \text{ is continuous} \right\} $$

    $C^{1}$と混同する可能性がある場合は、$C^{0}$と書くこともある。

  • コンパクトサポートを持つ連続関数のベクトル空間を次のように表記する。

    $$ C_{c} (\mathbb{R}) := \left\{ f \in C(\mathbb{R}) : f \text{ has compact support} \right\} $$

  • $x \to \pm \infty$の時、関数値が$0$に収束する連続関数のベクトル空間を次のように表記する。

    $$ C_{0} ( \mathbb{R} ) := \left\{ f \in C(\mathbb{R}) : f(x) \to 0 \text{ as } x \to \pm \infty \right\} $$

  • $m$回まで微分可能であり、その導関数がすべて連続である連続関数のベクトル空間を次のように表記する。

    $$ C^{m}(\mathbb{R}) :=\left\{ f \in C(\mathbb{R}) : f^{(n)} \text{ is continuous } \forall n \le m \right\} $$

    この場合$C^{0}(\mathbb{R})$は$C(\mathbb{R})$を意味する。この時の$C^{m}$の要素を$m$回 連続的に微分可能な関数continuously differentiable functionと呼ぶ。

  • 無限に微分可能で、その導関数がすべて連続である連続関数のベクトル空間を次のように表記する。 $$ C^{\infty}(\mathbb{R})=\bigcap _{m=0}^{\infty}C^{m}(\mathbb{R}) $$ この時の$C^{\infty}$の要素をスムース関数smooth functionと呼ぶ。

※ 著者によっては$C_{0}$を$C_{c}$の意味で使う場合があるので、教科書で定義された表記をよく確認しよう。

説明

ソボレフ空間超関数論などでは$C_{c}^{\infty}$を主に扱うことになる。

当然ながら$C_{c} (\mathbb{R})$は$C_{0} (\mathbb{R})$の部分空間になる。二つとも単なる連続関数の空間$C (\mathbb{R})$に比べて良い空間だが、作用素ノルム $\left\| \cdot \right\|_{\infty} $に対してバナッハ空間にならないことに注意する必要がある。例えば、次のような$\left\{ f_{k} \right\}_{k \in \mathbb{N}} \subset C_{c} (\mathbb{R})$を考えてみよう

$$ f_{k} (x) := \begin{cases} {{ \sin x } \over { x }} \chi_{[ - k \pi , k \pi ]} (x) & , x \ne 0 \\ 1 & , x = 0 \end{cases} $$

$f_{k}$はすべての$k \in \mathbb{N}$に対してコンパクトサポート$[-k \pi , k \pi]$を持つが、次のようなシンク関数 $\sinc \in C_{0} (\mathbb{R}) \setminus C_{c} (\mathbb{R})$に収束する。

$$ \sinc x = \begin{cases} {{ \sin x } \over { x }} & , x \ne 0 \\ 1 & , x = 0 \end{cases} $$

距離空間として1

区間$[0, 1]$上で連続な実数値関数の集合を$X = C[0, 1]$としよう。そして、[距離] $d$を次のように定義しよう。

$$ d(x, y) := \int\limits_{0}^{1} \left| x(t) - y(t) \right| dt \qquad \forall x, y \in X $$

すると、距離空間$(X, d)$は完備空間ではない。以下の図(a)に示すような関数$x_{m}$を考えよう。

$n \gt m$とすると、任意の$\varepsilon \gt 0$に対して$m \gt 1/\varepsilon$の時はいつでも$1 \cdot \frac{1}{m} \lt \varepsilon$が成立するので、$d(x_{m}, x_{n}) \lt \varepsilon$によって$\left\{ x_{m} \right\}$はコーシー数列である。

しかし、$x_{m}(t) = 0$と$(t \in [0, 1/2])$であり、$x_{m}(t) = 1$と$(t \in [a_{m}, 1])$なので、次のようになる。

$$ \begin{align*} d(x_{m}, x) &= \int\limits_{0}^{1} \left| x_{m(t)} - x(t) \right| dt \\ &= \int\limits_{0}^{\frac{1}{2}} \left| 0 - x(t) \right| dt + \int\limits_{\frac{1}{2}}^{a_{m}} \left| x_{m(t)} - x(t) \right| dt + \int\limits_{a_{m}}^{1} \left| 1 - x(t) \right| dt \\ &= \int\limits_{0}^{\frac{1}{2}} \left| x(t) \right| dt + \int\limits_{\frac{1}{2}}^{a_{m}} \left| x_{m(t)} - x(t) \right| dt + \int\limits_{a_{m}}^{1} \left| 1 - x(t) \right| dt \\ \end{align*} $$

各被積分関数が$0$以上であるため、$d(x_{m}, x)$が$0$に収束するためには、各被積分関数が$0$でなければならない。つまり、$x$は$t\in[0, \frac{1}{2})$で$x(t) = 0$であり、$t\in (\frac{1}{2}, 1]$では$x(t) = 1$である。これは明らかに連続関数ではないため、$x \notin X$であり、$\left\{ x_{m} \right\}$は$X$に収束しない。

ノルム空間として2

連続関数空間$C[0, 1]$は、積分ではなく、最大値をノルムとして与えると完備空間、つまり完備ノルム空間(バナッハ空間)となる。つまり、以下のように定義された$\left\| \cdot \right\|$に対して$(C[0, 1], \left\| \cdot \right\|)$はバナッハ空間である。

$$ \left\| f \right\| := \max\limits_{t \in [0, 1]} \left| f(t) \right|,\qquad f \in C[0, 1] $$


  1. Erwin Kreyszig, Introductory Functional Analysis with Applications (1978), p38 ↩︎

  2. Erwin Kreyszig, Introductory Functional Analysis with Applications (1978), p61-62 ↩︎