logo

物理学のための微分方程式の基礎:よく遭遇する微分方程式の解法 📂数理物理学

物理学のための微分方程式の基礎:よく遭遇する微分方程式の解法

微分方程式

学部レベルの物理学を勉強する人向けに、できるだけ直感的に説明した。

微分方程式とは、簡単に言うと微分を含んだ方程式のことだ。難しく考える必要はなくて、加速度は位置の二回微分なので、もっとも有名な物理学の式F=maF=maも微分方程式である。

多項式x3+3x+1=0x^{3}+3x+1=0は最高次数が3なので3次方程式と呼ばれる。同様に、微分方程式で最も多く微分された回数がnnの時、その微分方程式をnn階微分方程式と呼ぶ。n次degree方程式と呼ぶことも多いが、正確にはn階order方程式が正しい。ff^{\prime \prime}ffの2階微分ではなく、2階微分と呼ぶことを思い出そう。

今、以下の事実を受け入れて進もう。

  • nn次方程式の解がnn個あるように、nn階微分方程式の解もnn個ある。
  • 微分方程式の解を線形結合しても微分方程式の解となる。

線形結合とは、与えられた対象にそれぞれ定数を掛けて足し合わせたもので、例えばxxyyの線形結合は定数a,ba, bに対してax+byax+byという式になる。

一般解

一般解とは、微分方程式のすべての解を表すことができる一般的な形をいう。最も身近な一般解の例は根の公式だ。2次方程式の根の公式

x=b±b24ac2a x = \dfrac{-b \pm \sqrt{b^{2}-4ac}}{2a}

はすべてのax2+bx+c=0ax^{2} + bx + c = 0形の2次方程式の解を表す最も一般的な形だ。「グラフが(0,3)(0,3)を通る直線の関数を見つけなさい」という問題の答えは

y=x+3,y=3x+3,y=5x+3 y=x+3,\quad y=3x+3,\quad y=5x+3

などがある。ここで、可能なすべての答えを一度に簡潔に示すと次のようになる。

y=ax+3 y=ax+3

したがって、y=ax+3y=ax+3がその問題の一般解である。

解法

微分方程式を解くということは、一般解を求めることと同じだ。以下の4つの微分方程式は物理学を勉強する時に頻繁に接触する。だから、理解できたら覚えておくといい。

X=X(x)X=X(x)を1変数関数、α\alphaを定数とする。

1階微分方程式

dXdx=αX \frac{ d X}{ dx }=\alpha X

微分して自分自身が出てくる関数を見つけることだ。高校から学んでいる通り、これはexe^{x}だ。定数α\alphaに対する条件を満たす答えは次のようになる。

X(x)=eαx X(x)=e^{\alpha x}

ここで前にどんな係数が掛かっていても成り立つので、一般解を求めると

X(x)=Aeαx X(x)=Ae^{\alpha x}

このとき、AAは任意の定数。

係数が正の2階微分方程式

d2Xdx2=α2X \begin{equation} \frac{ d^{2}X }{ dx^{2} }=\alpha ^{2} X \end{equation}

2回微分しても自分自身であり、符号を保持する関数はやはり指数関数exe^{x}だ。定数α\alphaに対する条件を満たす答えは次のようになる。

X(x)=eαx X(x)=e^{\alpha x}

(1)(1)で定数をα\alphaではなくα2\alpha ^{2}と記述する理由は解を綺麗に示すためである。α\alphaで表すと解がX(x)=eαxX(x)=e^{\sqrt{\alpha}x}になるので、上の場合より綺麗ではない。そして(1)×(1)=1(-1)\times (-1)=1なので、

X(x)=eαx X(x)=e^{-\alpha x}

また、(1)(1)に適応する解だとわかる。したがって、一般解を求めると次のようになる。

X(x)=Aeαx+Beαx X(x)=Ae^{\alpha x}+Be^{-\alpha x}

このとき、AABBは定数。

係数が負の2階微分方程式

d2Xdx2=α2X(2) \frac{ d ^{2}X}{ dx^{2} }=-\alpha^{2}X \tag{2}

2回微分したときに自分自身でありながら、符号が変わる関数は、よく知っているようにcosx\cos xsinx\sin xだ。定数に対する条件を満たす答えは

X(x)=cos(αx),X(x)=sin(αx) X(x)=\cos (\alpha x),\quad X(x)=\sin ( \alpha x)

したがって、一般解は

X(x)=Acos(αx)+Bsin(αx)(3) X(x)=A\cos (\alpha x) +B\sin (\alpha x) \tag{3}

このとき、AABBは定数。しかし、指数関数の指数に複素数iiが含まれていると、同様に(2)(2)を満たすため、X(x)=eiαxX(x)=e^{i\alpha x}X(x)=eiαxX(x)=e^{-i\alpha x}も解であることがわかる。したがって、一般解は

X(x)=Ceiαx+Deiαx(4) X(x)=Ce^{i\alpha x}+De^{-i\alpha x} \tag{4}

このとき、CCDDは定数。オイラーの公式eiαx=cos(αx)+isin(αx)e^{i\alpha x}=\cos (\alpha x) + i \sin (\alpha x)により、正弦関数と余弦関数は指数関数と入れ替えて書くことができるため、(3)(3)(4)(4)は表現が異なるだけで、実質同じ式である。量子力学では解が複素関数(波動関数)の場合、iiが含まれる指数関数の形で書き、力学などで解が明らかに実関数の場合、よくcos\cosで書かれる。

定数項が含まれる2階微分方程式

d2Xdx2=±α2X+β \begin{equation} \frac{ d ^{2} X}{ d x^{2}}=\pm\alpha^{2}X+\beta \end{equation}

(1)(1)(2)(2)の式を簡潔に表現するために係数を省略して次のように書ける。

d2Xdx2±X=0 \frac{ d ^{2}X}{ d x^{2} }\pm X=0

これはXXXXを2回微分すると符号の差を除いて同じになるという意味だ。しかし、(5)(5)のように微分方程式に定数項が含まれていると、符号だけでなく他の違いもあるということだ。XXXX^{\prime \prime}を定数項だけで異なるようにするには、簡単だ。XXに定数項があると考えてみる。一度微分するだけでなくなる定数項は、2回微分すると当然なくなる。だから、微分方程式に現れた定数項に適切な他の定数を掛けてXXに含めてしまえば解になる。X=α2X+βX^{\prime \prime}=\alpha^{2} X + \betaの解は

X(x)=Aeαx+Beαxβα2 X(x)=Ae^{\alpha x} + B e^{-\alpha x} - \dfrac{\beta}{\alpha^{2}}

で、X=α2X+CX^{\prime \prime}=-\alpha ^{2}X+Cの解は

X(x)=Ceiαx+Deiαxβα2 X(x)=Ce^{i\alpha x}+De^{-i\alpha x} - \dfrac{\beta}{\alpha^{2}}

(5)(5)に代入してみると実際に成立することが確認できる。