logo

ボレルσ-代数、ボレル可測空間 📂測度論

ボレルσ-代数、ボレル可測空間

定理

$X$を任意の集合とする。そして、空集合でない$A \subset \mathcal{P}(X)$が与えられたとする。そうしたら、$A$を含む最小の$\sigma$-代数、$\mathcal{E}_{A}$が存在する。

証明

$\mathcal{E}_{A}$を定義し、それが$\sigma$-代数になることを示した後、最小である1ことを示そうと思う。


$A$を含む全ての$\sigma$-代数の集合を$S$とする。

$$ S:= \left\{ \mathcal{E} \subset \mathcal{P}(X)\ :\ \mathcal{E}\ \mathrm{is\ } \sigma \mathrm{-algebra, \ } A \subset \mathcal{E} \right\} $$

それで、$\mathcal{P}(X) \in S$であることは自明である。従って、$S \ne \varnothing$である。今、$\mathcal{E}_{A} := \bigcap \limits_{\mathcal{E} \in S} \mathcal{E}$としよう。そうすると$A \subset \mathcal{E}_{A}$である。さらに、$\mathcal{E}_{A}$が$\sigma$-代数であることを示すことができる。

$\sigma$-代数

集合$X$が与えられたとする。下記の条件を満たす$X$の部分集合のコレクション $\mathcal{E} \subset \mathcal{P}(X)$を**$\sigma$-代数**という。

  • (D1) $\varnothing, X \in \mathcal{E}$
  • (D2) $E \in \mathcal{E} \implies E^c \in \mathcal{E}$
  • (D3) $E_{k} \in \mathcal{E}\ (\forall k \in \mathbb{N}) \implies \bigcup_{k=1}^\infty E_{k} \in \mathcal{E}$
  • (D4) $E_{k} \in \mathcal{E}\ (\forall\ k \in \mathbb{N}) \implies \bigcap_{k=1}^\infty E_{k} \in \mathcal{E}$
  • (D1)

    各$\mathcal{E}$が$\sigma$-代数であるので、$\varnothing$、$X$が含まれていることは明らかである。従って、$\mathcal{E}_{A}$の定義によれば、$\varnothing$、$X\in \mathcal{E}_{A}$は明らかである。

  • (D2)

    $E \in \mathcal{E}_{A}$とする。すると、$\mathcal{E}_{A}$の定義により、各$\mathcal{E}$に対しても$E \in \mathcal{E}$が成立する。各$\mathcal{E}$は$\sigma$-代数であるので、$E^c \in \mathcal{E}$である。従って、$\mathcal{E}_{A}$の定義により$E^c \in \mathcal{E}_{A}$である。

  • (D3)

    条件**(D2)を示したように、$\mathcal{E}_{A}$の定義と各$\mathcal{E}$が$\sigma$-代数である事実を利用すると、簡単に示すことができる。(D4)(D3)**が成立すれば、デモルガンの法則により自動的に成立する。

したがって、$\mathcal{E}_{A}$は条件**(D1)〜(D4)**を満たすので、$\sigma$-代数である。今、$A$を含む別の$\sigma$-代数を$\mathcal{E}^{\prime}$としよう。すると、集合$S$の定義により、$\mathcal{E}^{\prime} \in S$であり、明らかに$\mathcal{E}_{A} \subset \mathcal{E}^{\prime}$である。したがって、$\mathcal{E}_{A}$は$A$を含む最小の$\sigma$-代数である。

定義

  • この時、$\mathcal{E}_{A}$を**$A$によって生成された$\sigma$-代数**$\sigma$-algebra generated by Aと呼び、$\mathcal{G}(A)$で表記する。

  • 対$(X,\mathcal{T})$を位相空間と言う。位相の定義により、$\mathcal{T} \subset \mathcal{P}(X)$である。従って、上記の定理により、$\mathcal{T}$を含む最小の$\sigma$-代数が存在する。これを$\mathcal{B}_\sigma (X) :=\mathcal{G}(\mathcal{T})$で表記し、位相空間$(X,\mathcal{T})$上のボレル$\sigma$-代数あるいは単にボレル代数Borel algebraという。

  • $\mathcal{B}_\sigma (X)$の要素をボレル集合Borel setと言い、対$(X,\mathcal{B}_\sigma (X) )$をボレル可測空間Borel measurable spaceと言う。


簡単に言えば、ボレル代数とは全ての開集合を要素として持つ最小の$\sigma$-代数である。特に、ボレル代数で定義される全ての測度ボレル測度Borel measureと呼ぶ。

参照


  1. 無駄な部分が最小限に抑えられたシグマ場とも言える。この意味で、ボレルシグマ場は特に確率論を議論する際に便利である。 ↩︎