ハミルトン-ヤコビ方程式とハミルトニアン方程式
ハミルトン方程式を得る方法は二つある。一つはオイラー-ラグランジュ方程式から得るもので、もう一つはこの記事で紹介するハミルトン・ヤコビ方程式の特性方程式から得る方法だ。
定義1
以下の偏微分方程式を一般ハミルトン・ヤコビ方程式と呼ぶ。
$$ G(Du, u_{t}, u, x, t)=u_{t}+H(Du, x)=0 $$
- $t >0 \in \mathbb{R}$
- $x \in \mathbb{R}^{n}$
- $u : \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}$
ここで、微分演算子$D$はマルチインデックス表記に従い、常に空間変数$x$に対する微分とする。すなわち$D=D_{x}$であり、$Du=D_{x}u=(u_{x_{1}}, \cdots, u_{x_{n}})$である。そして$H : \mathbb{R}^n \times \mathbb{R}^n \rightarrow \mathbb{R}$をハミルトニアンと呼ぶ。
特性方程式
便宜上$H \in C^{\infty} \big(\mathbb{R}^{n} \times (0,\infty) \big)$とする。そして上記のようなハミルトン・ヤコビ方程式が与えられている。このとき、式を簡単にするために時空間変数を一つにまとめて$y$と表す。
$$ y=(x,t)=(x_{1}, \cdots, x_{n}, t) $$
また$u$の時間微分、空間微分も$q$で一度に表す。
$$ \begin{align*} q &=q(Du, u_{t}) =q(u_{x_{1}}, u_{x_{2}},\dots, u_{x_{n}}, u_{t}) \\ &= (p, p_{n+1}) =(p_{1}, p_{2}, \dots, p_{n}, p_{n+1}) \end{align*} $$
最後に$z=u$とすると、ハミルトン・ヤコビ方程式は以下のように表される。
$$ \begin{equation} G(q, z, y)=p_{n+1}+H(p, x)=0 \quad \forall (q, z, y)\in\mathbb{R}^{n+1}\times \mathbb{R} \times \big( \mathbb{R}^n\times (0, \infty) \big) \label{eq1} \end{equation} $$
$G$の微分を求めると、それぞれ次のようになる。
$$ \begin{align} D_{q} G(q, z, y) &= (G_{p_{1}}, \cdots, G_{p_{n+1}})=\big(H_{p_{1}}(p,x), \dots , H_{p_{n}}(p,x), 1\big)=\big( D_{p} H(p,x), 1\big) \label{eq2} \\ D_{z} G(q, z, y) &= G_{z}=0 \label{eq3} \\ D_{y} G(q, z, y) &= \big( G_{y_{1}}, \cdots, G_{y_{n+1}} \big)=\big( H_{x_{1}}(p,x), \cdots, H_{x_{n}}(p,x), H_{t}(p,x) \big) =\big( D_{x}H (p,x), 0\big) \label{eq4} \end{align} $$
また$G(q,z,y)$の特性方程式は以下のようである。
$$ \left\{ \begin{align*} \dot{q}(s) &= -D_{y} G\big(q(s), z(s), y(s) \big)-D_{z} G\big(q(s), z(s), y(s) \big)q(s) \\ \dot{z}(s) &= D_{q} G\big(q(s), z(s), y(s) \big) \cdot q(s) \\ \dot{y}(s) &= D_{q} G\big(q(s), z(s), y(s) \big) \end{align*} \right. $$
すると$\dot{q}(s)$は以下のようになる。
$$ \begin{align*} \dot{ q}(s) &= -D_{y} G\big(q(s), z(s), y(s) \big)-D_{z} G\big(q(s), z(s), y(s) \big)q(s) \\ &= -D_{y} G\big(q(s), z(s), y(s) \big) \\ &=- (D_{x} H(p,x), 0) \end{align*} $$
二番目の等号は$\eqref{eq2}$によるものであり、三番目の等号は$\eqref{eq4}$によるものである。$q=(p, p_{n+1})$であるため、$\dot{q}$の各成分は以下のようになる。
$$ \begin{align*} \dot{p}^{i}(s) &= -H_{x_{i}} \big( p(s), x(s) \big) &( i=1,\dots,n) \\ \dot{p}^{n+1}(s) &= 0 \end{align*} $$
$\dot{z}(s)$は以下のようになる。
$$ \begin{align*} \dot{z}(s) &= D_{q} G\big(q(s), z(s), y(s) \big) \cdot q(s) \\ &= \Big( D_{p}H\big(p(s), x(s) \big), 1 \Big)\cdot\big( p(s), p_{n+1}(s) \big) \\ &= D_{p} H\big( p(s), x(s)\big)\cdot p(s) +p_{n+1}(s) \\ &= D_{p} H\big( p(s), x(s)\big)\cdot p(s) -H\big( p(s), x(s)\big) \end{align*} $$
二番目の等号は$\eqref{eq2}$によるもので、四番目の等号は$\eqref{eq1}$によるものである。$\dot{y}(s)$は以下のようになる。
$$ \begin{align*} \dot{y}(s) &= D_{q}G\big(q(s), z(s), y(s) \big) \\ &= \big(D_{p}H(p,x), 1 \big) \end{align*} $$
$y=(x,t)$であるため、$\dot{y}=(\dot{x}, \dot{t})$の各成分は以下のようになる。
$$ \begin{cases} \dot{x}(s) = D_{p}H\big( p(s), x(s) \big) \\ \dot{t}(s)=1 \end{cases} $$
上記の結果から、$s$を$t$と同じものと考えることができる。ここまで計算したものを総合して、ハミルトン・ヤコビ方程式の特性方程式を次のように得る。
$$ \begin{align*} \dot{p}(s) &= -D_{x}H \big( p(s), x(s) \big) \\ \dot{z}(s) &= D_{p} H\big( p(s), x(s)\big)\cdot p(s) -H\big( p(s), x(s)\big) \\ \dot{x}(s) &= D_{p}H\big( p(s), x(s) \big) \end{align*} $$
ここで特に、最初と三番目の式をまとめてハミルトン方程式と呼ぶ。
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Lawrence C. Evans, Partial Differential Equations (2nd Edition, 2010), p113-114 ↩︎