理想気体の断熱膨張
📂熱物理学理想気体の断熱膨張
定理
物質量が1で、圧力がp、体積がVである断熱膨張をする理想気体の系では、pVγは定数である。
この時、γ=CVCpは等圧熱容量と等容熱容量の比率である。
説明
断熱膨張とは、熱エネルギーが変わらない条件での膨張を言う。γ=CVCpの物理的な意味は特にない。
証明
熱力学第一法則
dU=δQ+δW
熱力学第一法則により、dU(T,V)は全微分であり、以下が成り立つ。
dU=∂T∂UdT+∂V∂UdV
気体分子の平均運動エネルギー
⟨EK⟩=23kBT
気体分子の平均運動エネルギーが上記のようになるので、全エネルギーはこれに分子数Nを掛けたものと同じである。
U=23NKBT
したがって、∂V∂U=0であり、そしてCV=∂T∂Uより、dU=CVdTが成立する。また、熱エネルギーが変わらないので、δQ=0である。これを熱力学第一法則に代入すると、次を得る。
CVdTdU=δQ+δW=δW⟹CVdT=δW
しかし、δW=−pdVが成立し、物質量がn=1の気体である場合、理想気体の方程式はp=VnRT=VRTである。したがって、次の式を得る。
CVdT===δW−pdV−VRTdV
ここで、γ=CVCp=1+CVR⟹CV=γ−1Rであるため、次を得る。
⟹⟹CVdT=−VRTdVγ−1RdT=T1dT=−VRTdVV1−γdV
膨張前の体積と温度をV1,T1、膨張後の体積と温度をV2,T2として、両辺を積分すると、次のようになる。
⟹⟹⟹∫T1T2T1dT=∫V1V2V1−γdVlnT1T2=T1T2=T2V2γ−1=(1−γ)lnV1V2(V1V2)1−γT1V1γ−1
したがって、TVγ−1は定数である。理想気体の法則では、T=RpVであるため、次を得る。
TVγ−1=RpV⋅Vγ−1=pVγ
したがって、pVγは定数である。
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