ピカールの方法
定理1
$E$が$\mathbb{R}^{n}$でオープンであり、$f \in C^{1} (E)$に関して以下のような初期値問題が与えられているとしよう。
$$ \begin{cases} \dot{ \phi } = f ( \phi ) \\ \phi (0) = \phi_{0} \end{cases} $$
関数列 $\left\{ u_{k} (t) \right\} _{ k =0}^{ \infty }$を以下のように定義しよう。
$$ \begin{cases} u_{0} (t) = \phi_{0} \\ u_{k+1} (t) = \phi_{0} + \int_{0}^{t} f \left( u_{k} (s) \right) ds \end{cases} $$
すると、連続関数$u (t) := \lim_{k \to \infty} u_{k} (t)$は与えられた初期値問題の解である。
- $C^{1}$は微分可能な関数の集合だ。
説明
当然$u$は存在するものと仮定し、存在しなければ意味のない定理だ。さらに$u$は連続でなければならないが、$u_{k}$が連続である必要はない。このように厳密な数学であると言いながら、ぎこちない部分は通常、この方法が使われる定理で補足される。
証明
$$ \begin{align*} & u (t) \\ =& \lim_{k \to \infty} u_{k+1} (t) \\ =& \lim_{k \to \infty} \left( \phi_{0} + \int_{0}^{t} f \left( u_{k} (s) \right) ds \right) \\ =& \phi_{0} + \int_{0}^{t} \lim_{k \to \infty} f \left( u_{k} (s) \right) ds \\ =& \phi_{0} + \int_{0}^{t} f \left( \lim_{k \to \infty} u_{k} (s) \right) ds & \because \text{continuity of } f \\ =& \phi_{0} + \int_{0}^{t} f \left( u(s) \right) ds \end{align*} $$
$t = 0$ならば、
$$ u (0) = \phi_{0} + \int_{0}^{0} f \left( u(s) \right) ds = \phi_{0} + 0 = \phi_{0} $$
微積分学の基本定理によると、関数$f$が閉区間$[a,b]$で連続であれば、関数$F(x) = \int_{a}^{x} f(t) dt$は$[a,b]$で連続であり、$(a,b)$で微分可能で、 $$ {{dF(x)} \over {dx}} = f(x) $$
$u$が連続であるため、$( f \circ u )$も連続であり、微積分学の基本定理により、
$$ \dot{u } (t) = \left( \phi_{0} + \int_{0}^{t} f \left( u(s) \right) ds \right)' = f \left( u (t) \right) $$
したがって、$u$は与えられた初期値問題の解であることがわかる。
■
William E. Boyce, Boyceの初等微分方程式及び境界値問題 (第11版, 2017), p83-90 ↩︎