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抽象代数学における体 📂抽象代数

抽象代数学における体

定義 1

  1. $(R , + , \cdot)$が乗算$\cdot$に対する単位元$1 \in R$を持っている時、$1$を単位元unityと言う。
  2. 単位元を持つ環$R$で、乗算に対する逆元が存在する元素$r \ne 0$を単元unitと言う。
  3. 単位元を持つ環$R$で、$0$以外の全ての元が単元であれば、それを除算環division ringと言う。
  4. 除算環$R$が乗算に関して可換ならば、その環をfieldと言う。

説明

簡単に言えば、体$(F , + , \cdot )$とは、加算に対する単位元$0 \in F$を除くすべての元が逆元を持つ可換環である。抽象代数の観点から考えると難しそうだが、解析学で学んだ$\mathbb{R}$を思い出してみれば、実際にはこれが「代数構造」らしいと見ることができるだろう。

なぜ逆元を持つ元がユニットと呼ばれるのか

単位元の英語表現であるUnityは簡単に受け入れられるが、なぜ逆元を持つ元素をUnitと呼ぶのか理解し難い人も多いのではないだろうか。通常、Unitは「単位」と訳され、「ある量を測るときの基準」として良く使われるからだ。逆元が存在することと単位は関係ないように見えるが、なぜUnitと定義したのか?ここで面白い脳内提案をしてみたい。

代数学の発展初期には、当然ながら整数に関する研究が活発だった。実際、私たちが整数集合を$\mathbb{Z}$と書くのも、ドイツ語のZahlringからきており、‘Zahl-‘が「数」を意味し、’-ring’はご存知の通りに翻訳されている。代数学で使われる多くの概念が数論のセンスから出てきたと受け入れるのはそう難しくないだろう。

ここで整数体$\mathbb{Z}$を考えてみよう。

$\mathbb{Z}$は無限に多くの整数を元として持つ。ここで、乗算に対して単位元となるのは$1$のみで、逆元を持つ元素は$-1$と$1$のみである。抽象代数を学ぶだけの数学に親しんでいれば、$-1$と$1$が「ユニット」と呼ばれるのに違和感を感じないはずだ。この背景から、整数を超えて様々な代数構造を見ていくうちに、これらをユニットと呼ぶのが適切だったのではないかと思われる。

$\mathbb{R}$に至って、$0$を除く全ての$r \in \mathbb{R}$に対して乗算に対する逆元$\displaystyle {{1} \over {r}} \in \mathbb{R}$が存在するので、$0$を除く全ての元がユニットである。考えてみれば、ある数$a$を$r$に掛けて欲しい数である$x$を作ることができるので、$r \ne 1$も単位としての役割を果たす理由が全くない。そして、そのある数$a$は当然$a = r^{-1}x$であり、$r^{-1}$の存在無しには確信できないことだ。

参照


  1. Fraleigh. (2003). 「抽象代数入門」(第7版): p173。 ↩︎