物理学における運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの定義
運動エネルギー1
力が位置にのみ依存する時、つまり速度や時間に対して独立している時、粒子の直線運動の運動方程式(微分方程式)は以下のようになる。
$$ \begin{equation} F(x)=m\ddot{x} \label{force1} \end{equation} $$
この場合、加速度$\ddot{x}$を速度に対して以下のように表現できる。
$$ \begin{align*} \ddot{x} &= \dfrac{d \dot{x}}{dt} \\ &=\dfrac{dv}{dt} \\ &=\dfrac{dv}{dx} \dfrac{dx}{dt} \\ &=v\dfrac{dv}{dx} \\ &= \frac{1}{2}\frac{ d (v^{2})}{ dx } \end{align*} $$
これを$(1)$に代入すると、
$$ F(x)=m\ddot{x}= m\frac{1}{2}\frac{d(v^{2})}{dx}=\frac{ d }{ dx }\left( \frac{1}{2}mv^{2} \right) $$
上記の式の括弧内の物理量を粒子の運動エネルギーと定義し、$T$と表記しよう。
$$ T=\dfrac{1}{2}mv^2 $$
すると、運動方程式$(1)$は以下のように表される。
$$ F(x)=\dfrac{dT}{dx} $$
運動エネルギーの記号は、kineticの最初の文字を取って$K$や$E_{K}$とされることがある。
ポテンシャルエネルギー
ここで、関数$V(x)$を以下のように定義しよう。
$$ -\dfrac{dV(x)}{dx}=F(x) $$
上記の式で定義される関数$V(x)$をポテンシャルエネルギーと呼ぶ2。すると、運動エネルギーと同じように以下の式で表せる。
$$ -\frac{ d V(x)}{ d x}=F(x)=\frac{ d T}{ d x} $$
上記の式を最初の位置$x_{0}$から後の位置$x_{1}$まで積分すると、以下のようになる。
$$ -V(x_{1}) +V(x_{0}) =T_{1}-T_{0} $$
この式が意味するのは、物体が運動している間にポテンシャルエネルギーの変化量と運動エネルギーの変化量が大きさは同じで符号は逆であるということだ。つまり、一方が増加すると、もう一方が同じ大きさだけ減少する。これは、両者の合計が常に一定であるという意味だ。だから、両者の合計を粒子の総エネルギーや力学的エネルギーとし、$E$と表記しよう。
$$ E=T_{0}+V(x_{0})=T_{1}+V_{x_{1}} $$
この式をエネルギー方程式と呼ぶ。上で見たように、力が位置に依存する関数、ポテンシャルエネルギー$V(x)$から得られる場合には、粒子の力学的エネルギーが保存されるため、その力を保存力と呼ぶ。位置に依存するポテンシャルエネルギーが存在しない場合、つまり保存力ではない場合は非保存力と呼ぶ。非保存力が物体に作用する場合、物体の力学的エネルギーは保存されない。