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政府号行列 📂行列代数

政府号行列

定義1

正定値行列

二次形式$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x}$が

  • すべての$\mathbf{x} \ne \mathbf{0}$に対して$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} > 0$を満たすならば、二次形式や行列$A$を正定positive definiteという。

  • すべての$\mathbf{x} \ne \mathbf{0}$に対して$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} < 0$を満たすならば、二次形式や行列$A$を負定negative definiteという。

  • $\mathbf{x}$に従って、正の数も負の数も成り立つ場合には、二次形式や行列$A$を不定indefiniteという。

実行列の場合は、定義の$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x}$部分を$\mathbf{x}^{T} A \mathbf{x}$に置き換えて考えればよい。

準正定値行列

二次形式$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x}$が

  • すべての$\mathbf{x} \ne \mathbf{0}$に対して$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} \ge 0$を満たすならば、二次形式や行列$A$を正の準定positive semidefiniteという。

  • すべての$\mathbf{x} \ne \mathbf{0}$に対して$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} \le 0$を満たすならば、二次形式や行列$A$を負の準定negative semidefiniteという。

説明

これらの定義はクリアだが、省略されたものが多く、頭で追うのが難しい。式と説明をじっくり見ながら、概念自体を理解しよう。二次形式の定数が複素数の場合、すなわち$A$がエルミート行列である場合を考えてみよう。$A \mathbf{x} = \lambda \mathbf{x}$を見ると、$\lambda$は$A$の固有値になる。左辺に共役転置$\mathbf{x}^{\ast}$をかけると次のようになる。

$$ \mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} = \lambda \mathbf{x}^{\ast} \mathbf{x} = \lambda \mathbf{x} \cdot \mathbf{x} = \lambda | \mathbf{x} |^{2} $$

ここで$\mathbf{x} \ne \mathbf{0}$であるため、$|\mathbf{x}| ^2 > 0$であり、エルミート行列の固有値は実数なので、$\lambda |\mathbf{x}| ^2$も実数だ。したがって、$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x}$は実数であり、正か負かを確認できるということだ。行列とベクトルの乗算で表記すると理解しにくかったものが、$\lambda |\mathbf{x}| ^2$として表すとずっと分かりやすくなる。

$\lambda |\mathbf{x}|^{2}$の符号を考えると、常に$|\mathbf{x}|^{2} >0$なので、$\lambda$の符号だけを考えればよい。結局、ゼロベクターでない任意のベクターに対して$\mathbf{x}^{\ast} A \mathbf{x} > 0$という言葉は$A$のすべての固有値が正であるという意味になる。反対に考えれば、負定値行列はすべての固有値が負である行列であるという意味だ。こうして、定義性はもともと正負の概念がない行列に正負(positive/negative)といった概念を定義(definite)することと考えることができるだろう。これを含むのが定理1である。

さらに、可逆行列であるための同値条件により、正定値行列と負定値行列は$0$の固有値を持たないため、可逆行列である。(定理2)

応用

  • 数値線形代数学では、特に正定値に多くの関心が持たれる。条件として正定値を考えると、エルミート行列が基本でありながら、すべての固有値が正であるという、非常に強い条件だとわかる。
  • 動力学では、負定値行列の性質を利用して、システムの平衡点の安定性を研究することもある。
  • 統計学では、基本的に共分散行列が正の半定行列であるため、非常に重要だ。

定理1

二次形式 $\mathbf{x}^{\ast} A\mathbf{x}$について、

  • $\mathbf{x}^{\ast} A\mathbf{x}$が正定であるための必要十分条件は$A$のすべての固有値が正であることである。

  • $\mathbf{x}^{\ast} A\mathbf{x}$が負定であるための必要十分条件は$A$のすべての固有値が負であることである。

  • $\mathbf{x}^{\ast} A\mathbf{x}$が不定であるための必要十分条件は$A$が少なくとも1つの負の固有値と少なくとも1つの正の固有値を持つことである。

定理2

正の定値行列と負の定値行列は常に可逆行列である。

定理3

対称行列$A$について、

  • $A$が正定値であれば、$\mathbf{x}^{T}A\mathbf{x}=1$は楕円の方程式である。

  • $A$が負定値であれば、$\mathbf{x}^{T}A\mathbf{x}=1$はグラフを持たない。

  • $A$が不定であれば、$\mathbf{x}^{T}A\mathbf{x}=1$は双曲線の方程式である。


  1. Howard Anton, Chris Rorres, Anton Kaul, 「Elementary Linear Algebra: Applications Version」(第12版). 2019年, p423 ↩︎