ベクトル空間の部分空間
定義1
がベクトル空間の空集合でない部分集合とする。がで定義された加算とスカラー乗算に対してベクトル空間の定義を満たす時、をベクトル空間の部分空間subspaceと呼び、以下のように表記する。
説明
ベクトル空間の部分集合がの部分空間かどうかを判断するためには、ベクトル空間になるための10の規則を全て満たさなければならない。ベクトル空間の部分集合を取るたびに10の規則を全て確認するのはかなり面倒で困難なことになるだろう。しかし幸いなことに、あるベクトル空間の部分集合である理由だけで、いくつかの規則は自明に成立する。
例えばがの要素であれば、同時にの要素であるため、(A2), (A3), (M2)-(M5) は自然に成立する。したがって、加算に対する閉包性**(A1)、ゼロベクトルの存在(A4)、逆の存在(A5)、スカラー乗算に対する閉包性(M1)だけを確認すれば、は部分空間であることがわかる。しかし実際にはもっと単純である。条件(A1)、(M1)**を満たすことが部分空間であるための同値条件となる。
例
ベクトル空間の部分空間の例には、以下のものがある。
- 自分自身
- 剰余類
線形変換に対して、
線形変換に対して、
定理: 部分空間判定法
をベクトル空間の空集合でない部分集合とする。がの部分空間であることとが以下の二つの条件を満たすことは必要十分条件である。
(A1) 部分集合がで定義された加算に対して閉じている。
(M1) 部分集合がで定義されたスカラー乗算に対して閉じている。
証明
がの部分空間であると仮定する。が部分空間であれば、ベクトル空間の定義によりが**(A1)、(M1)**を満たすことは自明である。
が、を満たすと仮定する。そしてとする。そうするとはスカラー乗算に対して閉じていて、であるため、以下が成立する。
同じ理由でによって以下が成立する。
したがっては**(A1)-(M5)**を全て満たすのでの部分空間である。
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定理: 部分空間の交差も部分空間である2
をベクトル空間の部分空間とする。するともの部分空間である。
証明
部分空間判定法により、が**(A1)、(M1)**を満たしているか確認すればよい。とする。
(A1)
であるため、内の任意の二つのベクトルはそれぞれ、にも含まれている。は部分空間であるため、加算に対して閉じている。したがって
、以下が成立する。
したがって、交差の定義により以下が成立する。
内の任意の二つのベクトルに対して、もの要素であるため、は加算に対して閉じており、**(A1)**を満たす。
(M1)
上記の場合と同様に証明する。
であるため、内の任意のベクトルは、にも含まれている。は部分空間であるため、スカラー乗算に対して閉じている。したがって、あるスカラーに対して以下が成立する。
したがって、交差の定義により以下が成立する。
内の任意のベクトルに対して、もの要素であるため、はスカラー乗算に対して閉じており、**(M1)**を満たす。
結論
が部分空間の時、が**(A1)、(M1)**を満たすので、も部分空間である。
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従来の定理
がベクトル空間の部分空間とする。するともの部分空間である。