ガンマ関数の単純極
定理
複素関数としてのガンマ関数 $\Gamma$ の定義域は以下の通りです。 $$ \mathbb{C} \setminus \left( \mathbb{Z} \setminus \mathbb{N} \right) = \mathbb{C} \setminus \left\{ 0 , -1, -2, \cdots \right\} $$ それだけでなく、$\Gamma$ の特異点の集合 $\left( \mathbb{Z} \setminus \mathbb{N} \right)$ は単純極の集合です。
説明
可視化
上の図は実数軸でガンマ関数の実部のみをグラフに描いたもので、非正の整数で関数値が発散することが確認できます。
コード
以下は可視化のためのジュリアのコードです。
using SpecialFunctions, LaTeXStrings
z = -5:0.001:5
Γz = gamma.(Complex.(z))
plot(z, real.(Γz), lw = 2, color = :black, xticks = -5:1:5,
xlims = [-5, 5], ylims = [-5, 5], size = [400, 400])
hline!([0], color = :black)
vline!(-5:0, style = :dash, color = :red)
xlabel!(L"\Re(z)")
ylabel!(L"\Re(\Gamma (z))")
証明
オイラーの反射公式: $$ {\Gamma (1-p) \Gamma ( p )} = { {\pi} \over {\sin \pi p } } $$
$\Re (z) > 0$ においてガンマ関数 $\Gamma (z) = \int_{0}^{\infty} t^{z-1} e^{t} dt$ は $0$ ではない値でよく定義されます。オイラーの反射公式の両辺で $\Gamma (z)$ を割ると次のようになります。 $$ \Gamma (1-z) = {\frac{ \pi }{ \Gamma (z) \sin \pi z }} $$ $z = 1$ を代入すると $$ \Gamma (0) = \Gamma (1-1) = {\frac{ \pi }{ \Gamma (1) \cdot \sin 0 \pi }} = {\frac{ \pi }{ 0! \cdot 0 }} = \infty $$ になり、$z = 2$ を代入すると $$ \Gamma (-1) = \Gamma (1-2) = {\frac{ \pi }{ \Gamma (2) \cdot \sin 1 \pi }} = {\frac{ \pi }{ 1! \cdot 0 }} = \infty $$ になります。このような発散はすべての $z \in \left\{ 0, 1, 2, \dots \right\}$ で同じなので、$\Gamma$ はすべての非正の整数で特異点を持ち、それらすべての特異点は分母に $\sin \pi z$ が一つだけあるので単純極です。
■