ルベーグ積分
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リーマン積分の一般化を考える前に、簡単な関数simple functionを定義する必要がある。
関数値が非負のϕ:R→Rの値域が有限集合{a1,a2,⋯,an}であるとする。Ai=ϕ−1({ai})∈Mを満たすなら、ϕを簡単な関数と呼ぶ。簡単な関数には以下の特性がある。
- (i): i=jならAi∩Aj=∅
- (ii): k=1⨆nAk=R
- (iii): ϕ(x)=k=1∑nak1Ak(x)は可測関数だ。
簡単な関数は定義から、取り扱いが非常に簡単な3つの要素で構成されている。まず第一に、関数値が非負であるため、符号を考える必要がなく、第二に有限であるために、加算と減算が自由であり、第三に可測だ。数学のさまざまな分野で簡単simpleという言葉はさまざまな意味で使用されるが、少なくとも実解析では「複雑」の反対と考えてもよいだろう。このように扱いやすく便利な簡単な関数を定義した後、すぐにリーマン積分をカバーする新しい積分を考えることができる。
簡単な関数のルベーグ積分
ϕが簡単な関数で、E∈Mとするとき、∫Eϕdm:=k=1∑nakm(Ak∩E)を簡単な関数ϕのルベーグ積分と呼ぶ。ルベーグ積分には以下の特性がある。
- [1]: すべてのa>0に対して∫Eaϕdm=a∫Eϕdm
- [2]: 二つの簡単な関数ϕ,ψに対してϕ≤ψならば∫Eϕdm≤∫Eψdm
- [3]: A,B∈Mに対してA∩B=∅ならば∫A∪Bϕdm=∫Aϕdm+∫Bϕdm
しかし、簡単な関数という条件はあまりにも強力で特殊であるため、多くの場所で使うことができない。分割求積法のアイデアのようなものを加えると、ある程度満足できる「ルベーグ積分」が完成する。
定義
ϕが簡単な関数であるとき、関数値が非負の可測関数fとE∈Mに対して
∫Efdm:=sup{∫Eϕdm 0≤ϕ≤f}
を可測関数fのルベーグ積分lebesgue Integralと呼ぶ。
基本性質
ルベーグ積分には以下の性質がある。
- [1]’: すべてのr≥0に対して∫Erfdm=r∫Efdm
- [2]’: 二つの簡単な関数f,gに対してf≤gならば∫Efdm≤∫Egdm
- [3]’: A,B∈Mに対してA∩B=∅ならば∫A∪Bfdm=∫Afdm+∫Bfdm
- [4]’: A,B∈Mに対してA⊂Bならば∫Afdm≤∫Bfdm
- [5]’: N∈Nならば∫Nfdm=0
- [6]’: m(E)Einff≤∫Efdm≤m(E)Esupf
説明
これらの基本的な性質に加えて、以下のような定理を考えることができる。この定理を使用すれば、∫R1Qdm=0として新鮮な計算も一切れで終わらせることができる。見た目ほど証明は簡単ではないが、一度は見ておく価値があるだろう。
定理
可測空間(X,E)の可測関数f≥0とすべての可測集合A∈Eに対して
∫Afdm=0⟺f=0 a.e.
証明
(⟹)
E:=f−1(0,∞)に対してm(E)=0ならば、fはほとんど至る所f=0だ。En:=f−1[n1,∞)と仮定して、E=n=1⋃∞Enでありながらn→∞limEn=Eが成り立つ場合を考える。簡単な関数ϕn:=n11En≤fを考えると
n1m(En)=∫Aϕndm≤∫Afdm=0
従って
n1m(En)≤0
つまり、すべてのn∈Nに対してm(En)=0である。
[7]: En∈M, En⊂En+1⟹m(n=1⋃∞En)=n→∞limm(En)
一方でEn⊂En+1であるため、次のことが成り立つ。
m(n=1⋃∞En)=n→∞limm(En)=m(E)=0
(⟸)
fがほとんど至る所f=0であり、簡単な関数ϕが0≤ϕ≤fを満たすため、ϕもほとんど至る所ϕ=0である。従って∫Afdm=0が真である。
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