n次のモーメントが存在する場合、nより小さい次数のモーメントも存在する
📂数理統計学n次のモーメントが存在する場合、nより小さい次数のモーメントも存在する
定理
確率変数 X と自然数 n に対して E(Xn) が存在するなら、E(Xm),m=1,2,3,⋯,n も存在する。
説明
ある次数の積率が存在するだけで、それより小さい次数の積率は常に存在するが、当然ながら逆は成り立たない。もちろん、実際に問題を解くときに高次の積率が先に与えられることはほとんどないが、ある定理の条件を列挙する際にかなりのスペースを節約できる定理ではある。
証明
戦略:確率変数の絶対値を利用して回避し、大小関係を示した後、元々示そうとした不等式に戻る。この証明は連続確率分布に対するものだが、同じ方法で離散確率分布に対しても証明可能である。
確率変数 X の確率密度関数が f としよう。
パート1. E(Xn)<∞⟹E(∣X∣n)<∞
E(∣X∣n)=∫−∞∞∣x∣nf(x)dx=∞ と仮定すると
∫0∞∣x∣nf(x)dx=∞
または
∫−∞0∣x∣nf(x)dx=∞
一方 ⎩⎨⎧∫0∞∣x∣nf(x)dx=∫0∞xnf(x)dx∫−∞0∣x∣nf(x)dx=(−1)n∫−∞0xnf(x)dx であるから
E(Xn)=∫−∞∞xnf(x)dx=∫0∞xnf(x)dx−∫−∞0xnf(x)dx=∞
パート2. E(∣X∣n)<∞⟹E(∣X∣m)<∞
E(∣X∣m)==≤≤≤<∫−∞∞∣x∣mf(x)dx∫∣x∣<1∣x∣mf(x)dx+∫∣x∣>1∣x∣mf(x)dx∫∣x∣<1f(x)dx+∫∣x∣>1∣x∣nf(x)dx∫−∞∞f(x)dx+∫−∞∞∣x∣nf(x)dx1+E(∣X∣n)∞
パート3. E(∣X∣m)<∞⟹E(Xm)<∞
E(Xm)=≤≤=<∫−∞∞xmf(x)dx∫−∞∞xmf(x)dx∫−∞∞∣x∣mf(x)dxE(∣X∣m)∞
パート1. からパート3. をまとめると、E(Xn)<∞⟹E(Xm)<∞ を得る。
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