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複素空間の位相空間学 📂複素解析

複素空間の位相空間学

概要

複素数集合$\mathbb{C}$を位相空間として扱うための定義を紹介する。位相空間とは言っても、ほとんどが距離空間での定義を複素集合に特化させたものだ。解析入門を一生懸命勉強したなら、そんなに難しくなく受け入れられる。

定義 1

$\alpha \in \mathbb{C}$で、$\delta > 0$で、$S \subset \mathbb{C}$とする。

集合の開閉

  1. 以下のような集合を$\alpha$のオープン近傍またはオープンボールという。 $$ B \left( \alpha ; \delta \right) := \left\{ z \in \mathbb{C} : \left| z - \alpha \right| < \delta \right\} $$ アスタリスクasterisk$\ast$が上付き文字としてついている場合は、中心の$\alpha$を除外したものである。例えば$B^{\ast} \left( \alpha ; \delta \right)$は以下のように定義され、空孔ボールと呼ばれる。 $$ B^{\ast} \left( \alpha ; \delta \right) := \left\{ z \in \mathbb{C} : 0 < \left| z - \alpha \right| < \delta \right\} $$
  2. $\alpha$のオープンボールのどれかが$S$に含まれる場合、$\alpha$を$S$の内点という。 $$ \exist \delta : B \left( \alpha , \delta \right) \subset S $$
  3. $\alpha$の全ての空孔オープンボールが$S$と互いに素ではない場合、$\alpha$を$S$の集積点という。 $$ \forall \delta : B^{\ast} \left( \alpha , \delta \right) \cap S \ne \emptyset $$
  4. $S$の全ての点が$S$の内点である場合、$S$は開いていると言い、$S$が全ての集積点を含む場合、閉じていると言う。

有界とコンパクト

  1. $S \subset \mathbb{C}$の全ての元$z \in S$に対して$\left| z \right| \le M$を満たす正数$M > 0$が存在する場合、$S$はバウンデッドと言う。
  2. クローズドでバウンデッドならコンパクトと言う。

複素領域

  1. $S \subset \mathbb{C}$の全ての2点が経路で構成される線分で繋がることができるなら、$S$は**(多角)連結**集合と言う。
  2. 空集合でなくオープンな連結集合$\mathscr{R} \subset \mathbb{C}$を領域と言い、特に複素空間での領域を意味する場合、複素領域と強調する。

追加定義

上の段落では、特に複素解析だけでなく、数学で普遍的に必要な部分のみを要約した。当然、次のような定義や記号も必要な時がある。

  1. 以下のような集合を$\alpha$のクローズド近傍またはクローズドボールという。 $$ B \left[ \alpha ; \delta \right] := \left\{ z \in \mathbb{C} : \left| z - \alpha \right| \le \delta \right\} $$
  2. $\alpha$の全てのオープン近傍が$S$と$S^{c}$の点を含む場合、$\alpha$を境界点という。$\alpha$が内点でも境界点でもない場合、外点と言う。
  3. $S$の全ての集積点の集合を$S$の閉包と言い、$\overline{S}$のように表す。
  4. $\mathbb{C} \setminus S$が連結集合なら、連結集合$S$を単純連結と言う。

参照

複素数集合$\mathbb{C}$は体の公理に従うだけでなく、複素数のモジュラス$\left| \cdot \right|$が与えられることによってノルム空間でもあり、距離空間である。したがって、距離空間に既に馴染みがあれば、複素空間として新たに学ぶべきことは何もない。


  1. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p10~12. ↩︎