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極限比較判定法 📂微分積分学

極限比較判定法

定理1

二つの級数 $\sum a_{n}$と$\sum b_{n}$について、$a_{n}, b_{n} \gt 0$とする。もし正の数$c \gt 0$が存在して

$$ \lim\limits_{n \to \infty} \dfrac{a_{n}}{b_{n}} = c $$

が成り立つなら、二つの級数はどちらも収束するか、どちらも発散する。

説明

これは極限比較判定法the limit comparison testと言う。比較判定法は直感的で有用だが、収束する数列より各項が小さい級数の収束性しか判定できない。例えば、$\sum \dfrac{1}{2^{n}}$は$r = \dfrac{1}{2}$である幾何級数なので収束し、比較判定法から$\sum \dfrac{1}{2^{n} + 1}$も収束することがわかる。しかし、級数$\sum \dfrac{1}{2^{n} - 1}$は収束するが$\dfrac{1}{2^{n} - 1} \gt \dfrac{1}{2^{n}}$なので、比較判定法ではわからない。極限比較判定法はこうした場合に役立つ。

証明

$m$と$M$が$m \lt c \lt M$を満たす正の数とする。$\lim\limits_{n \to \infty} \dfrac{a_{n}}{b_{n}} = c$なので十分に大きい$N$に対して次が成り立つ。

$$ m \lt \dfrac{a_{n}}{b_{n}} \lt M \qquad \forall n \ge N $$

$$ \implies m \cdot b_{n} \lt a_{n} \lt M \cdot b_{n} \qquad \forall n \ge N $$

もし$\sum b_{n}$が収束するなら、$\sum M \cdot b_{n}$も収束し、比較判定法により$\sum a_{n}$も収束する。逆に$\sum b_{n}$が発散するなら、$\sum m \cdot b_{n}$も発散し、比較判定法により$\sum a_{n}$も発散する。

同じ論理で$\sum a_{n}$が収束するなら$\sum b_{n}$も収束し、$\sum a_{n}$が発散するなら$\sum b_{n}$も発散する。


  1. James Stewart, Daniel Clegg, and Saleem Watson, Calculus (early transcendentals, 9E), p762 ↩︎