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複素解析における三角関数と双曲線関数の関係 📂複素解析

複素解析における三角関数と双曲線関数の関係

定義 1

複素関数としての双曲関数 $\sinh, \cosh : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$ を下記のように定義する。 $$ \sinh z := { {e^{z} - e^{-z}} \over 2 } \\ \cosh z := { {e^{z} + e^{-z}} \over 2 } $$

定理 2

$$ \begin{align*} \sinh (iz) =& i \sin z \\ \sin (iz) =& i \sinh z \\ \cosh (iz) =& \cos z \\ \cos (iz) =& \cosh z \end{align*} $$

説明

双曲関数に初めて接する時、最も理解できないのが「なぜこんな定義を使うのか」という点だ。実数上で三角関数は単位円の三角比で定義され、双曲関数は指数関数の線形組み合わせで表される。しかし、定義だけを見ても、なぜ双曲関数を三角関数の一種と呼ぶのか納得が難しい。複素数上でこれらの関数を見ると、この体系がいかによく組み立てられ、直感的か理解できる。

上記の性質は、三角関数で元々使われていた性質ともある程度文脈を共有している。

サイン関数は奇関数、コサイン関数は偶関数

$$ \sin (-\theta) = - \sin \theta \\ \cos (-\theta) = \cos \theta $$

$-1$ が$\sin$ の内外を自由に行き来し、$\cos$ に影響を与えないように、$i$ も$\sin$ と $\sinh$ の内外を自由に行き来し、$\cos$ と$\cosh$ に影響を与えない。違いは $\sin$ であれ $\cos$ であれ $\text{h}$ の存在が反転することだ。複素数が正でも負でもない $i$ と $-i$ の世界を作り出したと考えれば、三角関数も $\sin$ か $\cos$ を超えて $\sinh$ と $\cosh$ が必要なのだと気づくだろう。

双曲関数の周期性

$$ \sinh (ix) = i \sin x \\ \cosh (ix) = \cos x $$

一方で、三角関数と双曲関数の関係から、純虚数で双曲関数が周期性を持つことを容易に確認できる。少し考えればすぐにわかるが、その性質に慣れていない時は自分一人で気づくのは難しい。

証明

複素解析における三角関数: $$ \sin z = { {e^{iz} - e^{-iz}} \over 2 i } \\ \cos z = { {e^{iz} + e^{-iz}} \over 2 } $$

$$ \sinh (iz) = { { e^{iz} - e^{-iz} } \over 2 } = i { { e^{iz} - e^{-iz} } \over {2 i} } = i \sin z $$

$$ \sin (iz) = { {e^{iiz} - e^{-iiz}} \over 2 i } = - i { {e^{-z} - e^{z}} \over 2 } = i \sinh z $$

$$ \cosh (iz) = { { e^{iz} + e^{-iz} } \over 2 } = \cos z $$

$$ \cos (iz) = { { e^{iiz} + e^{-iiz} } \over 2 } = { { e^{-z} + e^{z} } \over 2 } = \cosh z $$


  1. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p27. ↩︎

  2. Osborne (1999). Complex variables and their applications: p29. ↩︎