共変イデアル
定義 1
可換環 $R$のイデアル $P \ne R$が、$a, b \in R$および$ab \in P$に対して、$a \in P$または$b \in P$のとき、$P$を$R$の素イデアルprime Idealという。
説明
素という名称が示すように、元の積を分解することから始まる。
例えば整数環 $\mathbb{Z}$を考えると、$2 \mathbb{Z}$の全ての元は$2k$のように表され、$2 \in 2 \mathbb{Z}$であるため素イデアルになる。同じ論理で、任意の素数 $p$に対して、$p \mathbb{Z}$は全て$\mathbb{Z}$の素イデアルになる。しかし、$6 \mathbb{Z}$を考えると、$2 \cdot 3 \in 6 \mathbb{Z}$は真だが、$2 \notin 6 \mathbb{Z}$かつ$3 \notin 6\mathbb{Z}$であるため、$6 \mathbb{Z}$は$\mathbb{Z}$の素イデアルにはなれない。
一方、素イデアルは整域に関連して以下の性質を持つ。これは極大イデアルと体の関係と類似している。
定理
可換環 $R$が単位元 $1_{R}$を持つとする。
- $P$は$R$の素イデアル $\iff$ $R / P$は整域である
証明
$( \implies )$
- 環 $R$に対して、$ab = 0$を満たす非ゼロの$a,b \in R$を零因子zero Divisorという。
- 単位元$1 \ne 0$を持つ$D$が零因子を持たない場合、それを整域integral Domainという。
$xy + P$が$R/P$の恒等元$(0 + P)$だとすると、$xy \in P$である。$P$は素イデアルであるため、$x \in P$または$y \in P$でなければならない。
- $x \in P$とすると、$x + P = P = 0 + P$であるため、$x = 0$
- $y \in P$とすると、$y + P = P = 0 + P$であるため、$y = 0$
したがって、$R/P$は零因子を持たず、$R / P$は整域となる。
$( \impliedby )$
再び$xy \in P$を考える。
$$ (x + P) ( y + P ) = xy + P = P = 0 + P $$ $0 + P$が整域$R/P$の恒等元であるため、$(x + P) = (0 + P )$または$(y + P) = (0 + P )$でなければならない。
- $(x + P) = (0 + P ) = P$と仮定すると、すぐに$x \in P$である。
- $(y + P) = (0 + P ) = P$と仮定しても、すぐに$y \in P$である。
したがって、$P$は素イデアルとなる。
■
また、極大イデアルと素イデアルに関する以下の系を得る。体がまず整域であることから明らかである。$I$が$R$の極大イデアルであれば、$R / I$は体であり、体が整域であるため、$I$は素イデアルである。
系
単位元 $1_{R}$を持つ可換環 $R$の極大イデアルは素イデアルである。
Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p248. ↩︎