抽象代数学におけるイデアル
定義 1
環 $(R , + , \cdot )$ の全ての $a,b \in R$ に対して $a I \subset I$ と $I b \subset I$ を満たす部分群 $(I, +)$ をアイディアルidealと呼ぶ。
説明
簡単な例として、$n \mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}$ のアイディアルになる。アイディアルという名前は文字通り 理想的なidealから来たものだ。抽象代数で扱うには理想的な部分群だから、実際にそう呼ぶわけだ。
特に$R$ が可換環である場合、$I$ が $R$ の正規部分群になる意味で、ただの $I \triangleleft R$ とも呼ばれる。正規部分群が群論で重要だったように、アイディアルも環論のあらゆる定理で重要に登場することだろう。特に環論と呼ぶのは、アイディアルが実質的に環の概念に限定されるからだ。
アイディアル $I$ は $R$ の部分環だ。
定義では、条件を満たす「部分群」として群との対比を強調したが、実際には自然に部分環にもなる。ここでは証明はしないが、理解に苦しむ場合は、$a I \subset I$ と $I b \subset I$ という条件をよく考えればいい。感じとして、$I$ は $R$ の全ての元に対して「乗算を施した時」に依然として代数構造として存在できる「耐えうる元の集まり」だ。常識的にこのように作り出した $(I , \cdot )$ は少なくとも $(R , + , \cdot)$ に対して半群くらいは成り立つだろう。もちろん、この説明は数学的ではないので、疑問が残る場合は部分環の判定法を使って直接確認してみよう。実際には、教科書によっては最初から部分環として定義していることもある。
Fraleigh. (2003). 「抽象代数入門」第7版: p241. ↩︎