logo

カルノーエンジン 📂熱物理学

カルノーエンジン

定義

20180726\_171306.png

以下の四つのプロセスを順番に実行する機関をカルノー機関Carnot engineという。

  • Step 1. 等温膨張 プロセス ABA \to B:
    温度がThT_{h}に保持された状態で熱エネルギーQhQ_{h}を受け取り、体積がVAV_{A}からVBV_{B}に増加する。

  • Step 2. 断熱膨張 プロセス BCB \to C:
    熱が保持された状態で体積がVBV_{B}からVCV_{C}に増加し、温度がThT_{h}からTlT_{l}に減少する。

  • Step 3. 等温収縮プロセス CDC \to D:
    温度がTlT_{l}に保持された状態で熱エネルギーQlQ_{l}を放出し、体積がVCV_{C}からVDV_{D}に減少する。

  • Step 4. 断熱収縮プロセス DAD \to A:
    熱が保持された状態で体積がVDV_{D}からVAV_{A}に減少し、温度がTlT_{l}からThT_{h}に増加する。

定理

カルノー機関の熱効率は次のようになる。

η=1QlQh=1TlTh \eta = 1 - \dfrac{Q_{l}}{Q_{h}} = 1 - \dfrac{T_{l}}{T_{h}}

説明

二つの等温プロセスと二つの断熱プロセスを扱うだけだが、どんな複雑な機関よりも効率が高い。実際、この設計は理論的にのみ意味があるもので、実際の熱機関の効率はカルノー機関にはるかに及ばない。このように無駄に見えるカルノー機関が重要な理由は、効率がただ良いのではなく最も良いからである。

証明

ここでは、すべてのプロセスが理想気体に対するものであると仮定する。

熱力学第一法則

dU=δQ+δW d U = \delta Q + \delta W

すべてのプロセスを一度ずつ実行したときの内部エネルギーの変化は00であり、そのため熱力学第一法則により以下が成り立つ。

δW=δQ -\delta W = \delta Q

したがって、カルノー機関が一周期で外部に行った仕事は次のようになる。

W=QhQl W = Q_{h} - Q_{l}

カルノー機関を模式的に示すと以下のようになる。

99ABE2395B580B1E15.png

断熱プロセス

pVγp V^{\gamma}は定数である。

理想気体の法則から、pTVp \propto \dfrac{T}{V}なので、pVγTVγ1pV^{\gamma} \propto T V^{\gamma - 1}も定数である。**Step 2. BCB \to Cは断熱プロセスなので、以下が成り立つ。

ThVBγ1TlVCγ1=1 { { T_{h} V_{B}^{\gamma - 1} } \over {T_{l} V_{C}^{\gamma - 1}} } = 1

要約すると、次を得る。

ThTl=(VCVB)γ1 {{T_{h} } \over {T_{l} }} = \left( \dfrac{V_{C}}{V_{B}} \right)^{\gamma - 1}

**Step 4. DAD \to Aも断熱プロセスなので、以下が成り立つ。

TlVDγ1ThVAγ1=1 { { T_{l} V_{D}^{\gamma - 1} } \over {T_{h} V_{A}^{\gamma - 1}} } = 1

要約すると、次を得る。

(VDVA)γ1=ThTl \left( \dfrac{V_{D}}{V_{A}} \right)^{\gamma - 1} = {{T_{h} } \over {T_{l} }}

したがって、VDVA=VCVB\dfrac{V_{D}}{V_{A}} = \dfrac{V_{C}}{V_{B}}であり、要約すると、次を得る。

VBVA=VCVD \begin{equation} \dfrac{V_{B}}{V_{A}} = \dfrac{V_{C}}{V_{D}} \label{eq1} \end{equation}

等温プロセス

ΔQ=RTlnV2V1 \Delta Q = RT \ln \dfrac{V_{2}}{V_{1}}

Step 1. ABA \to Bは等温プロセスなので、次を得る。

Qh=RThlnVBVA \begin{equation} Q_{h} = RT_{h} \ln \dfrac{V_{B}}{V_{A}} \label{eq2} \end{equation}

Step 3. CDC \to Dも等温プロセスなので、次を得る。

Ql=RTllnVCVD Q_{l} = RT_{l} \ln \dfrac{V_{C}}{V_{D}}

(eq1)\eqref{eq1}VBVA=VCVD\dfrac{V_{B}}{V_{A}} = \dfrac{V_{C}}{V_{D}}と等しかったので、これを(eq2)\eqref{eq2}に代入して、次を得る。

QhQl=RThlnVBVARTllnVCVD=ThlnVCVDTllnVCVD=ThTl \dfrac{Q_{h}}{Q_{l}} = \dfrac{ RT_{h} \ln \dfrac{V_{B}}{V_{A}} }{ RT_{l} \ln \dfrac{V_{C}}{V_{D}} } = \dfrac{ T_{h} \ln \dfrac{V_{C}}{V_{D}} }{ T_{l} \ln \dfrac{V_{C}}{V_{D}} } = \dfrac{T_{h}}{T_{l}} よって、カルノー機関の効率は次のようになる。

η=WQh=QhQlQh=1QlQh=1TlTh \eta = {{W} \over {Q_{h}}} = {{Q_{h} - Q_{l} } \over {Q_{h}}} = 1 - \dfrac{Q_{l}}{Q_{h}} = 1 - \dfrac{T_{l}}{T_{h}}