カルノーエンジン
📂熱物理学カルノーエンジン
定義

以下の四つのプロセスを順番に実行する機関をカルノー機関Carnot engineという。
Step 1. 等温膨張 プロセス A→B:
温度がThに保持された状態で熱エネルギーQhを受け取り、体積がVAからVBに増加する。
Step 2. 断熱膨張 プロセス B→C:
熱が保持された状態で体積がVBからVCに増加し、温度がThからTlに減少する。
Step 3. 等温収縮プロセス C→D:
温度がTlに保持された状態で熱エネルギーQlを放出し、体積がVCからVDに減少する。
Step 4. 断熱収縮プロセス D→A:
熱が保持された状態で体積がVDからVAに減少し、温度がTlからThに増加する。
定理
カルノー機関の熱効率は次のようになる。
η=1−QhQl=1−ThTl
説明
二つの等温プロセスと二つの断熱プロセスを扱うだけだが、どんな複雑な機関よりも効率が高い。実際、この設計は理論的にのみ意味があるもので、実際の熱機関の効率はカルノー機関にはるかに及ばない。このように無駄に見えるカルノー機関が重要な理由は、効率がただ良いのではなく最も良いからである。
証明
ここでは、すべてのプロセスが理想気体に対するものであると仮定する。
熱力学第一法則
dU=δQ+δW
すべてのプロセスを一度ずつ実行したときの内部エネルギーの変化は0であり、そのため熱力学第一法則により以下が成り立つ。
−δW=δQ
したがって、カルノー機関が一周期で外部に行った仕事は次のようになる。
W=Qh−Ql
カルノー機関を模式的に示すと以下のようになる。

断熱プロセス
pVγは定数である。
理想気体の法則から、p∝VTなので、pVγ∝TVγ−1も定数である。**Step 2. B→Cは断熱プロセスなので、以下が成り立つ。
TlVCγ−1ThVBγ−1=1
要約すると、次を得る。
TlTh=(VBVC)γ−1
**Step 4. D→Aも断熱プロセスなので、以下が成り立つ。
ThVAγ−1TlVDγ−1=1
要約すると、次を得る。
(VAVD)γ−1=TlTh
したがって、VAVD=VBVCであり、要約すると、次を得る。
VAVB=VDVC
等温プロセス
ΔQ=RTlnV1V2
Step 1. A→Bは等温プロセスなので、次を得る。
Qh=RThlnVAVB
Step 3. C→Dも等温プロセスなので、次を得る。
Ql=RTllnVDVC
(eq1)がVAVB=VDVCと等しかったので、これを(eq2)に代入して、次を得る。
QlQh=RTllnVDVCRThlnVAVB=TllnVDVCThlnVDVC=TlTh
よって、カルノー機関の効率は次のようになる。
η=QhW=QhQh−Ql=1−QhQl=1−ThTl
■