第一同型定理の証明
定理 1
$G,G'$ が群だとしよう。
- 第一同型定理: 準同型写像 $\phi : G \to G'$ が存在するならば $$ G / \ker ( \phi ) \simeq \phi (G) $$
- 第二同型定理: $H \le G$ かつ $N \triangleleft G$ の場合 $$ (HN) / N \simeq H / (H \cap N) $$
- 第三同型定理: $H , K \triangleleft G$ かつ $K \leq H$ の場合 $$ G/H \simeq (G/K) / (H/K) $$
同型定理isomorphism theoremは、代数学者エミー・ネーターによって証明された三つの独立した定理を指す。
説明
第一同型定理は、上の図の赤色に相当する同型写像 $\color{red} {\mu}$ が存在することを意味している。これは、群において $\phi$ に対して不必要な部分を捨て、核をある種の「単位」として扱うだけの構造を残すことができることを示している。
証明
$K : = \ker ( \phi )$ とする。$\mu : G / K \to \phi (G)$ を $\mu (xK) = \phi ( x)$ として定義しよう。$\mu$ が同型写像であることを示せばよい。
第1部. $\mu$ は関数である。
$x,y \in G$ と $G'$ の単位元 $e'$ に対して
$$ \begin{align*} & xK = yK \\ \iff & x^{-1} y \in K \\ \iff & \phi ( x^{-1} y ) = e' \\ \iff & \phi ( x^{-1} ) \phi ( y ) = e' \\ \iff & \phi ( x ) ^{-1} \phi ( y ) = e' \\ \iff & \phi ( x ) = \phi ( y ) \end{align*} $$ 従って $xK = yK \implies \phi ( x ) = \phi ( y )$ なので $\mu$ は関数である。
第2部. $\mu$ は単射である。
第1部のプロセスを逆にたどれば $\phi ( x ) = \phi ( y ) \implies xK = yK$ となるので $\mu$ は単射である。
第3部. $\mu$ は全射である。
$\mu ( G / K ) = \left\{ \mu (xK) \ | \ x \in G \right\} = \left\{ \phi (x) \ | \ x \in G \right\} = \phi (G)$ だから、$\mu$ は全射である。
第4部. $\mu$ は準同型写像である。
$x,y \in G$ に対して $$ \mu (xKyK) = \mu (xyK) = \phi (xy) = \phi (x) \phi (y) = \mu (xK) \mu (yK) $$ 従って $\mu$ は準同型写像である。
■
一般化
一方で、第一同型定理を環に対して拡張した定理が知られている。証明方法はほぼ同じで、群と異なり、加法と乗法の二つの操作を考える点が異なる。
準同型写像の基本定理: 環 $R$, $r '$ に対して準同型写像 $\phi : R \to r '$ が存在するならば $R / \ker ( \phi ) \simeq \phi (R)$
Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p307~309. ↩︎