物理学における温度の定義
📂熱物理学物理学における温度の定義
定義
エネルギーがEの系があるとしよう。Eに関する微視状態の数をΩ(E)=Ωとするとき、
kBT1:=dEdln(Ω)
Tを系の温度temperatureと定義する。(ただし、kBはボルツマン定数)
微視状態と巨視状態
統計力学で、ある系の巨視状態macrostateと微視状態microstateは、例えば次のような概念だ。箱の中にコイン四枚が入っているとする。この箱を強く振って開けると、表と裏がランダムに決まる。この時のコインの状態を表を白色、裏を濃灰色で表現すると、次のようになる。

表の数だけを見るなら0個から4個までの合計5通りがあり、これを巨視状態の数 Sという。一方、各コインが表か裏かまで数えると、知られているように24=16通りあり、これを微視状態の数 Ωという。
当然ながら、微視状態の数Ωが大きければ、そのに対応する巨視状態が観測される確率が高い。上の状況で、コインn個の中でk個が表である微視状態の数をΩ(k,n−k)とすると、微視状態の数が最も多いのはΩ(2,2)=6で、したがって、表と裏がそれぞれ二枚ずつの場合が観測されやすい。
導出
温度の定義は、相互作用する二つの系の巨視状態を探す過程で自然に導かれる。以下のような閉じた系Xを考えよう。

XはAとBに分かれている。A、B内部のエネルギーをそれぞれEA、EBとしよう。上のコインの例で言うと、AとBは特定のコインの集まりで、EAとEBはそれぞれ表のコインの数だ。
すべての微視状態が起こりうる確率が同じで、AとBが十分に相互作用した(または時間が十分に流れた)と仮定して、二つの系が熱平衡状態にあるとする。全系のエネルギーはEX=EA+EBと同じである。全系Xの微視状態の数は、Aが可能な微視状態の数Ω(EA)とBが可能な微視状態の数Ω(EB)の積で表される。
ΩX(EX)=ΩA(EA)ΩB(EB)
すると、熱平衡状態での巨視状態は、上の式の値が最も大きい時と自然に受け入れられる。実際、熱平衡時の巨視状態で可能な微視状態の数は、他の場合より圧倒的に多いと言われている。微視状態の数Ωを正規分布と考えれば、(1)を微分して0になる点が最大値であることを自然に受け入れられるだろう。
しかし、実際には、粒子のエネルギーは連続した値ではなく量子化されている。したがって、系全体のエネルギーEXも離散的な値を持つ。しかし、熱物理学の場合、扱う系の粒子の数が非常に多いので、可能なEXの値も非常に多い。したがって、EX、EA、EBを連続した値を持つ変数と考えよう。
再び巨視状態を探すことに戻って、熱平衡時の巨視状態(エネルギー)をE=EA+EBとしよう。すると、(1)をEAで微分してEA=EAを代入すると、0になるということだ。
dEAd(ΩA(EA)ΩB(EB))EA=EA=0
上の式を計算すると、積の微分法によって次のようになる。
ΩB(EB)dEAdΩA(EA)EA=EA+ΩA(EA)dEBdΩB(EB)dEAdEBEA=EA=0
ここで、AとBの間でどのようにエネルギーが移動しても、全体のエネルギーEX=EA+EBは変わらない定数であるため、次が成立する。
dEA=−dEB⟹dEAdEB=−1
これを上の式に代入すると、次の式を得る。
⟹⟹⟹ΩBdEAdΩAEA=EA−ΩAdEBdΩBEB=EB=ΩA1dEAdΩAEA=EA−ΩB1dEBdΩBEB=EB=ΩA1dEAdΩAEA=EA=dEAdlnΩA(EA)=00ΩB1dEBdΩBEB=EBdEBdlnΩB(EB)
最後の行は、対数関数の微分法と連鎖律により成立する。ここで、上の式は熱平衡の条件で、左辺は系Aの変数だけで構成された値で、右辺は系Bの変数だけで構成された値だ。熱平衡状態で両側がそれぞれの状態だけで同じ値を持つので、この値で温度を定義すれば妥当だろう。すると、AとBの温度をそれぞれTAとTBと定義できる。
kBTA1kBTB1:=dEAdlnΩA(EA):=dEBdlnΩB(EB)
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