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偶数でありながら奇数でもある順列は存在しないことの証明 📂抽象代数

偶数でありながら奇数でもある順列は存在しないことの証明

定義

有限の対称群順列が偶数個の互換の積で表せる場合は偶数evenとし、奇数個の互換の積で表せる場合は奇数oddという。

説明

偶数と奇数の定義は自然だが、定義だけ見れば偶数か奇数かのどちらかでなければならない排他性があるとは言えない。以下の定理を通じて確認してみよう。

定理 1

偶数でありながら奇数という順列は存在しない。

証明

有限対称群 $S_{n}$ の互換 $\tau : = ( i , j )$ と順列 $\sigma$ を考えよう。

有限対称群のすべての順列は互いに素なサイクルの合成で表せる。


Case 1. $i$ と $j$ が $\sigma$ の異なる二つの軌道の元の場合

$i$ と $j$ が同じ軌道の元でないため、ある $r, m \in \mathbb{Z}$ に対して互いに素な二つのサイクルの積 $\sigma = (i , i_{1} , \cdots , i_{m}) (j , j_{1} , \cdots , j_{r})$として表せる。すると、互換の性質により $$ \begin{align*} \tau \sigma =& (i , j) \sigma \\ =& (i , j) (i , i_{1} , \cdots , i_{m}) (j , j_{1} , \cdots , j_{r}) \\ =& (i , i_{1} , \cdots , i_{m} , j ) ( j , j_{1} , \cdots , j_{r}) \\ =& ( j , i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) ( j , j_{1} , \cdots , j_{r}) \\ =& ( j , j_{1} , \cdots , j_{r} , i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \end{align*} $$ 従って、 $\tau \sigma$ は $i$ と $j$ を同じ軌道の元にして、$\sigma$ と $\tau \sigma$ の軌道の数は $1$ だけ違う。


Case 2. $i$ と $j$ が $\sigma$ の同じ軌道の元の場合

$i$ と $j$ が同じ軌道の元であるため、ある $r, m \in \mathbb{Z}$ に対して $\sigma = ( i , i_{1} , \cdots , i_{m}, j , j_{1} , \cdots , j_{r} )$ として表せる。すると、互換の性質により $$ \begin{align*} \tau \sigma =& (i , j) \sigma \\ =& (i , j) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} , j , j_{1} , \cdots , j_{r}) \\ =& (i , j) \left( i , j_{r} \right) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} , j , j_{1} , \cdots , j_{r-1}) \\ =& (i , j) \left( i , j_{r} \right) \left( i , j_{r-1} \right) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} , j , j_{1} , \cdots , j_{r-2}) \\ =& (i , j) \left( i , j_{r} \right) \cdots \left( i , j_{1} \right) \left( i , j \right) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \\ =& (i , j) (i , j , j_{1} , \cdots , j_{r}) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \\ =& (i , j) (j , j_{1} , \cdots , j_{r} , i) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \\ =& (i , j) (j , i) ( j , j_{1} , \cdots , j_{r} ) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \\ =& ( j , j_{1} , \cdots , j_{r} ) (i , i_{1} , \cdots , i_{m} ) \end{align*} $$ となる。従って、 $\tau \sigma$ は $i$ と $j$ を異なる軌道の元にして、$\sigma$ と $\tau \sigma$ の軌道の数は $1$ だけ違う。


これにより、$\sigma$ と $\tau \sigma = (i , j ) \sigma$ の軌道の数の差は$i$ と $j$ が何であれ関係なく $1$ であることを確認した。つまり、どんな順列でも互換が一度掛かるたびに軌道の数が $1$ ずつ増えることだ。

一方で、恒等関数、つまり $\iota = \begin{bmatrix} 1 & 2 & \cdots & n \\ 1 & 2 & \cdots & n \end{bmatrix}$ の軌道の数は $n$ である。

補助定理: 元が二つ以上の有限対称群のすべての順列は互換の積で表せる。

任意の順列 $\sigma$ を互換 $\tau_{k}$ について表すと $\sigma = \tau_{1} \tau_{2} \cdots \tau_{N} \iota$ で、軌道の数は $(N + n)$ だ。自然数 $(N+n)$ が同時に偶数であり奇数であることはないため、順列 $\sigma$ も同時に偶数であり奇数であることはない。

リニューアル

  • 23年9月4日、リュ・デシク、Case 2 展開の修正及び補強

  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p91. ↩︎