線形変換の特性多項式
概要
線形変換の特性多項式を定義する。以下の定理から、式$\det(A - \lambda I) = 0$を解くことが固有値を見つけることと同じであることが分かる。したがって、$\det(A - \lambda I)$に名前をつけることは非常に自然であり、これを特性多項式という。
定理1
$F$を任意の体、$A \in M_{n\times n}(F)$とする。$\lambda \in F$が$A$の固有値であることは、$\det (A-\lambda I) = 0$であることと同値である。
証明
$\lambda$を$A$の固有値と仮定する。すると、
$$ \begin{align*} \lambda \text{ is eigenvalue of } A &\iff \exist \text{non-zero } v \text{ such that } Av = \lambda v \\ &\iff \exist \text{non-zero } v \text{ such that } (A - \lambda I)v = 0 \end{align*} $$
$A$を大きさが$n\times n$の正方行列とする。すると、以下の命題は全て同値である。
可逆行列である同値条件によれば、$A - \lambda I$は可逆行列ではなく、$\det (A - \lambda I) = 0$である。
定義
$A \in M_{n \times n}(F)$とする。多項式$f(t) = \det(A - tI)$を$A$の特性多項式characteristic polynomialとする。$f(t) = 0$を特性方程式characteristic equationとする。
$V$を$n$次元ベクトル空間とする。$T : V \to V$を線形変換とする。$\beta$を$V$の順序基底とする。$T$の特性多項式$f(t)$を$T$の行列表現の特性多項式として定義する。つまり、$f(t)$は以下の通りである。
$$ f(t) = \det\left( \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta} - t I \right) $$
説明
定義によれば、$T : V \to V$の特性多項式の根は固有値そのものであり、特性多項式が分解されると、$T$は$n = \dim(V)$個の固有値を持つ(異なるとは言っていない)。
定義で、$T$の特性多項式は順序基底$\beta$の選び方に依存するように思えるかもしれないが、実際にはそうではない。この理由から、線形変換$T$の特性多項式を以下のように記述することもある。
$$ \det (T - \lambda I) $$
確認しよう。$\beta$、$\beta^{\prime}$を$V$の順序基底、$Q$を$\beta$-座標を$\beta^{\prime}$-座標に変換する座標変換行列とすると、
$$ \begin{align*} \det( \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta} - tI) &= \det( \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta} - tI ) \det Q^{-1} \det Q \\ &= \det Q^{-1} \det( \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta} - tI ) \det Q \\ &= \det \left( Q^{-1} (\begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta} - tI) Q \right) \\ &= \det \left( Q^{-1}\begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta}Q - tI \right) \\ &= \det \left( \begin{bmatrix} T \end{bmatrix}_{\beta^{\prime}} - tI \right) \end{align*} $$
Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p248 ↩︎