複素関数の定義
定義 1
r 複素数集合 $\mathbb{C}$ の空集合じゃない部分集合 $A,B \subset \mathbb{C}$ に対して、$f : A \to B$ を 複素値関数complex Valued functionと呼ぶ。一方で、$A, B \subset \mathbb{R}$ のとき、複素関数と区別する意味で、$f : A \to B$ を 実値関数Real Valued functionとも呼ぶ。
説明
上の定義は、実は何も意味がない。いろいろ書いて何を言いたいんだと思うかもしれないけど、細かいことを言い出したらキリがないほど多くの部分でつまずく定義なので、定義として価値がない。
- Real, Complex Valued Functionという表現は、厳密に言えば「関数の値」が実数か複素数かを区別しており、従って定義域がどうであれ関係ない定義を立てるのが妥当だと思われる。
- 共域が$\mathbb{C}^{n}$だからと言って、それを複素ベクトル関数とわざわざ呼ばない。当然、$f : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$を複素スカラー関数と呼ぶこともない。
- 定義域が実数で共域が複素数だからと言って、またその逆であるからといって、その関数を複素関数でありながら実関数と呼ぶことはない。
- 実際に、実関数は中学高校から接するほとんどの関数を指すように見えるが、数学科では多くの講座や教科書が測度論に当たる内容を単に実解析と呼んでいて、混乱を招くことがある。
要するに、複素関数と実関数という表現自体が厳密な定義に基づいて使われているわけではなく、文脈によって慣例に従う性質が強いということだ。例えば、$f : \mathbb{C} \to \mathbb{C}$は誰もが複素関数と呼ぶし、$f : \mathbb{R} \to \mathbb{C}$も複素関数と呼んでいいけど「関数の値が複素数の関数」と区別する「傾向」がある。$f : \mathbb{C}^{n} \to \mathbb{C}^{n}$は誰でも複素関数と呼ぶが、$f : \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}^{n}$を実関数と呼ぶことはほとんどないんだが、主に$\mathbb{C}^{n}$は何かの関数や定理の一般化として意味があるが、$\mathbb{R}^{n}$はベクトル関数としての意味が強いからだ。
Osborne (1999). Complex variables and their applications: p22. ↩︎