抽象単体複合体の定義
📂位相データ分析抽象単体複合体の定義
定義
任意の集合 X が与えられたとする。
- X の冪集合 2X の有限な部分集合の中で次を満たす複体 A⊂2X を**(抽象的な)シンプレクス**abstract Simplicial Complexという。
α∈A∧β⊂α⟹β∈A
- 複体 A の要素 α∈A をシンプレックスsimplicesと呼ぶ。
- シンプレックス α の次元dimension dim は、α の基数から 1 を引いた値で定義される。
dimα:=∣α∣−1
複体 A の次元は、A のすべてのシンプレックスの次元の中の最大値として定義される。
dimA:=α∈Amax(dimα)
- シンプレックス α の空集合ではない真部分集合 β⊊α をα の面faceと呼ぶ。
- 次のように計算される A のすべてのシンプレックスの和集合 V(A) をA の頂点集合vertex setと言う。
V(A):=α∈A⋃α
- 複体の部分集合 B⊂A が複体である場合、部分複体subcomplexと言う。
- 次を満たす全単射 b:V(A)→V(B) が存在する場合、二つの複体 A,B が同型isomorphicであるという。
α∈A⟺b(α)∈B
- (幾何学的な)シンプレクス複体 K について、それの構成を全て無視して頂点間の関係のみを保持して得られた(抽象)シンプレクス複体 A をK の頂点スキーマvertex Schemeと言い、この時K をA の幾何学的実現geometric Realizationと言う。
説明
抽象的なシンプレクス複体はその名の通り、幾何学的な意味を省いたシンプレクス複体の抽象化である。数学者の視点から見れば、凸包などの条件はただの面倒くさい制約に過ぎない。
例えば、X=N を考えた場合
T:={{1},{2},{3},{4},{1,2},{2,3},{3,4},{4,1},{2,4}{1,2,4},{2,3,4}}
抽象的なシンプレクス複体のすべての条件を満足し、この場合、ユークリッド空間 R などの幾何学的な意味を全く気にする必要はない。T は0次元のシンプレックス4 個、1次元のシンプレックス5 個、2次元のシンプレックス2個を持ち、その複体自体は2次元であり、頂点集合としてV(T)={1,2,3,4} を持つ。一方、幾何学的シンプレクス複体 G が与えられた場合、T をG の頂点スキーマとして考えても問題ない。
