抽象代数学における自由群
📂位相データ分析抽象代数学における自由群
定義
- インデックス集合 I=∅ に対して、集合 A:={ai:i∈I} を アルファベットalphabetと呼び、その要素 ai∈A を レターletterとしよう。
- 整数 n∈Z に対して、ain のような形を 音節syllableと言い、これらの有限な並べ替えjuxtapostionである文字列 w を 単語wordとする。
- 音節 ainaim は、ain+m のように表現でき、これを 初等縮約elementary contractionと言う。これ以上初等縮約できない単語を 縮約語reduced wordとし、特に 1:=ai0 を 空単語empty wordとする。
- アルファベット A のレターで作れる全ての縮約語の集合を F[A] としよう。二つの単語 w1,w2∈F[A] に対して、w1⋅w2 が縮約語形で表される 二項演算 ⋅:F[A]2→F[A] を定義する。群 (F[A],⋅) を A によって生成されたフリーグループfree group generated by Aと呼ぶ。
- G が集合 A:={ai:i∈I} の要素を 生成元として持つ群であり、ϕ(ai)=ai の 同型 ϕ:G→F[A] が存在するなら、G を A 上でフリーfree on Aであると言い、ai をG の フリージェネレーターfree Generatorと呼ぶ。
- A=∅ 上でフリーな群を フリーグループfree groupと定義し、A の 濃度 ∣A∣ をフリーグループの ランクrankと呼ぶ。
説明
定義が長くて読むのが嫌になるかもしれないけど、実際に例を考えてみると全然難しくない。‘アルファベット’や’単語’のような用語が出てくる点に戸惑わないでほしい。代数学代數学という言葉自体が「数を代わりに文字を使うことについての勉強」という意味だからだ。ここまで来て考えてみれば、集合に演算を加えて考えるというアプローチがあまりにも抽象的だったかもしれない。実際、フリーグループについて定義が終わった後は、上で出てきた単語はほとんど使わない。心配せずに例を見てみよう。
アルファベットとレター
A={a,b}
上のような アルファベットを考えると、レターはただの a と b だけだ。
音節と単語
アルファベット A に対して
a2,b3,b−1
は全て 音節だ。これらを有限に、重複を許して並べるという意味で、並べ替えjuxtapostionという表現が使われ、定義としては、ただ 単語と言った。
a2bbbabb−2aaa−2ba−24
縮約語と空単語
例として、最後の単語 b−2aaa−2ba−24 が縮約される過程を見てみよう。
=====b−2aaa−2ba−24b−2a2a−2ba−24b−2a0ba−24b−21ba−24b−2ba−24b−1a−24
ここで a0=1 はまるで 単位元のように機能しており、実際にも音節がないという意味でEmpty Wordと呼ばれる。群になった後は特に 1 をアルファベットで書く必要はない。
A によって生成されたフリーグループ
ここまでのビルドアップから、(F[A],⋅) は自然に 群になる。単位元は空単語 1 であり、全ての単語 w に対して、次を満たす 逆元 w−1 が存在する。
w⋅w−1=w−1⋅w=1
最初から F[A] は具体的な単位元と逆元を与えられていたので、当然群だ。このようにフリーグループとは他でもない「群になるために作られた群」だ。
A 上でフリーな群
F[A]={⋯,a−2b−1,a−1b−1,a−1,b−1,1,a,b,ab,aba⋯}
F[A] の要素を具体的に並べてみると上のようだ。ここまでの定義はもちろん直感的で理解しやすいけど、実際には G そのものに興味がある。例えば、整数群 (Z,+) を考えると、{1} の要素を 生成元として持つ巡回群であり、F[{a}] と同型なので、{a} 上でフリーであると言える。
フリーグループとランク
ここまでの例から、Z は単元素集合 {a} 上でフリーなのでランク 1 であり、A={a,b} によって生成されたフリーグループ F[A] はランク 2 だ。